登山で山岳地帯を歩くとき、イヌワシを見ることができないか空を見上げてみます。日本のイヌワシは、天然記念物で絶滅が危惧されており、現在は約650羽に過ぎなくなっているといわれていますから、もし見かけることができたら貴重な体験といえるでしょう。今回はそんなイヌワシの話をきっかけに、我が国の相続税法の規定を考えてみたいと思います。

兄弟を殺すイヌワシ

イヌワシは翼が長く、開けた環境で狩をするため、世界的には草原に住む鳥であるとされていますが、日本のイヌワシは森林に生息する珍しい習性を持っています(樋口広芳『街・野山・水辺で見かける野鳥図鑑』147頁(日本文芸社2019))。野鳥図鑑によれば、特に岩場や崖のある森林帯に生息し(真木広造=大西敏一=五百澤日丸『決定版 日本の野鳥650』416頁(平凡社2014))、雌雄同色ですが、大きな雌では翼を広げると2mを超えるそうです(樋口・前掲書)。

さて、そんな日本のイヌワシは、一般に、卵を2つ、3~4日ほどの間隔を空けて産むといわれています(川上和人『トリノトリビア』125頁(西東社2018))。しかし、ほとんどの巣では、孵化から2週間ほどの間に、先に生まれた個体が後に生まれた個体を突き殺してしまうといいます。同じ兄弟なのに、です。