大手レコード会社「ユニバーサルミュージック」(東京・渋谷区)が、組織再編に伴う借入約58億万円の課税処分の取り消しを求めた裁判で、最高裁第1小法定(岡正晶裁判長)は4月21日、課税当局の上告を棄却した。この裁判は、法人税法132条1項(同族会社の行為計算否認規定)の適用を巡り争われていたもので、今後、同族会社の行為計算の否認規定の適用を巡って大きなインパクトになりそうだ。
この裁判で大きな焦点になったのが、国税の「伝家の宝刀」とも呼ばれる法人税法132条(同族会社の行為計算否認規定)の適用だ。1審に続き2審でも課税当局側の正当性が否定されたが、最高裁でも納税者サイドに軍配を上げ、課税当局の敗訴が確定した。
同族会社の行為計算否認規定の適用を巡って真っ先に頭に浮かぶのはIBM事件(https://kaikeizine.jp/article/1131/)。IBM事件もユニバーサルミュージック同様に、国側が敗訴している。
このユニバーサルミュージックと課税当局の争いは、音楽事業を目的とする同社(日本法人)が、2008~09年にかけて進められた組織再編に絡み、海外のグループ会社から約866億円を借り入れ、関連会社の買収費用に充てたことが発端。同社ではその後、支払った利子計約181億円を損金計上し申告。課税当局は、同支払利息の損金算入は原告の法人税の負担を不当に減少させるものであるとして、法人税法132条1項に基づき、本件各事業年度に係る法人税の各更正処分等を下した。
課税当局が同族会社の行為計算否認規定を適用した理由は、同社の組織再編や借り入れ行為は不自然で、グループ会社間で税負担を不当に減らすことが目的だったと判断。国税側が税額を再計算できるとした法人税法の規定に基づき、2008年12月期~12年12月期までの5年間で計約181億円の申告漏れを指摘し、約58億円を追徴課税した。
そもそもどうして海外のグループ会社から借入することとなったのかと言えば、グループ法人で組織再編を行った過程において、ユニバーサルミュージックに買収資金として貸し付けたということ。そして、このグループ法人が、デット・プッシュ・ダウン(debt push down)を行っていたということ。
デット・プッシュ・ダウンとは、親会社が外部から借り入れた資金を子会社に貸付け、借入金の返済に係る経済的負担を、企業グループの資本関係の下流にある子会社に負担させること。つまり、ユニバーサルミュージックが単体で、銀行から借入れしないことになる。
裁判では、このデット・プッシュ・ダウンが正当な事業目的を有する経済的合理性があるのか否かが焦点になった。