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酒井克彦の「税金」についての公開雑談~ヤフーオークションと期限直前申告~

近時は、使用しなくなった家具や、書籍といった日常品を、「メルカリ」や「ヤフーオークション」といった中古販売専用のネットオークションサービスを使って、売却する向きが多くなっているといいます。さて、今回は、ネットオークションに着目しながら、令和2年度与党税制改正大綱における提案の1つを考えます。

ネットオークション時代

ネットオークションが盛んになった背景には、おそらく、最近はやりのミニマリズムなどがあるのでしょう。

生活に通常必要とする資産を極力減らして、シンプルな生活スタイルを展開しようというこの考え方は、所有することに対する欲求が減退していると捉えることもできる反面、物欲に捕らわれないゆとりを感じさせる魅力的な生き方かもしれません。

いわゆる断捨離を断行する人にとって、これらのネットオークションのサービスは極めて便利に映るのではないでしょうか。

また、ネットオークションは、当然ながら購入者側の購入チャネルの充実にもつながっています。

好事家にとっては掘り出し物の商品に出会うこともできますし、しかも格安で入手できるかもしれないのですから、何とも魅力的な市場です(小職も、ビートルマニア(ビートルズのファン)として、これまで、苦労しても入手できずにいた様々な非売品である関連グッズなどをネットオークションで獲得したりすることができることなどもあって、これを頻繁に利用しています。)。

お目当ての商品を落とすには・・・

さて、例えば、ネットオークションで商品購入のためのオークションに参加する場合、目に見えない競争参加者とのオークションレースに勝ち抜いて目当ての商品をゲットするためには様々な戦略があるでしょう。

例えば、入札時間の制限がある中で、早めに入札をしてしまえば、競争相手にそれよりも高い金額で購入希望を出してしまわれる可能性があるわけです。そこで、入札終了時間のギリギリ数分前に目当ての商品に最高価格での購入希望を付けることができれば、時間制限の中で、自分が最高金額による購入者となることが可能となるはずです。

しかし、そのようなことは誰もが考えるところですし、他の入札参加者からすれば、入札終了時間ギリギリに高額入札があったとしても、そのことを知ったときには「時すでに遅し」ということになれば、競争入札者に熟慮時間を与えないことにもなりましょう。

それでは、アンフェアだという意見もあるかもしれません。そこで、ネットオークションサービスでは、入札者が入札時間ギリギリに最高金額を提示したとしても、そこで時間制限としてかかるオークションを閉めることはせず、最終入札からまた数分間の入札時間制限が延長される仕組みが採用されているのです。

ギリギリ申告と加算税

さて、租税法に目を転じると、課税当局による加算税の賦課決定の終期ギリギリに申告をし、税務当局に熟慮期間を与える前に賦課決定に係る時効を完成させ、加算税の賦課を行わせないようにする申告があります。

これは前述のネットオークションにおける入札時間ギリギリに最終入札の金額を提示するのと類似の手法であるともいえそうです。

かような期限ギリギリの申告が行なわれたとしても、課税当局には裁量によって加算税の賦課決定等の期間を延期する権限は与えられていないことから、いわば、ギリギリの申告をして“逃げ切る”ような場合に対して、課税当局には出す術がないのです。

そこで、この点が問題視され、令和元年12月12日に発表された令和2年度与党税制改正大綱において、期限到来間際にされた申告に係る加算税の賦課決定期限の整備を行うことが示されました。

すなわち、同大綱では、「賦課決定をすることができないこととなる日前3月以内にされた納税申告書の提出又は納税の告知を受けることなくされた源泉所得税等の納付(調査による更正決定又は納税の告知を予知してされたものを除く。)に係る無申告加算税又は不納付加算税の賦課決定について、その提出又は納付がされた日から3月を経過する日まで、行うことができることとするとともに、これらの賦課決定により納付すべき国税の消滅時効等について所要の整備を行う。」との提案がなされているのです。

なお、この改正は、法案が通過すれば、令和2年4月1日以降に法定申告期限等が到来する国税に係る加算税について適用するとされています。

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著者: 酒井克彦

中央大学法科大学院教授/法学博士

中央大学法科大学院教授。法学博士。現在、税務会計論・租税法などを担当。一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。単著に『スタートアップ租税法〔第3版〕』、『クローズアップ保険税務』、『クローズアップ事業承継税制』他5冊のアップシリーズ、『所得税法の論点研究』(財経詳報社)、『裁判例からみる所得税法』、『裁判例からみる法人税法〔3訂版〕』、『裁判例からみる税務調査』(大蔵財務協会)、『レクチャー租税法解釈入門』(弘文堂)、『プログレッシブ税務会計論Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』(中央経済社)、『アクセス税務通達の読み方』(第一法規)、『キャッチアップ改正相続法の税務』、『キャッチアップ外国人労働者の税務』、『キャッチアップ保険の税務』(ぎょうせい)など。その他、論文多数。
■一般社団法人アコード租税総合研究所
http://accordtax.net/
■一般社団法人ファルクラム(FULCRUM)
http://fulcrumtax.net/

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