静岡県は、2月23日を「富士山の日」と定め、県内では毎年さまざまなイベントが開催されています。令和4年2月23日に、静岡・山梨両県共催で予定されていた「富士山の日フェスタ2022」は、残念ながら、新型コロナウイルスの状況に鑑み中止となってしまったそうですが、これから暖かくなるにつれて、また多くの登山客、観光客が富士山を訪れることでしょう。さて、今回は、そうした富士山を巡り議論されている「富士山入山税」についてご紹介します。

富士山入山税の議論
以前このコラムにて、観光客に課する法定外目的税の一つとして「富士山入山税」について取り上げ、いわゆる「フリーライダー問題」をご紹介しました(酒井克彦の「税金」についての公開雑談~宮島訪問税~)。
現在、富士山の入山料は、5合目より先に立ち入る登山者を対象に、1人1千円を登山道入り口で集めていますが、あくまでも任意であることから、その不公平さが指摘されてきました。そこで、静岡県と山梨県が、法定外目的税として、全員徴収の富士山入山税を設けようとしているというわけです。
富士山入山税は、関係自治体において長らく議論されているテーマですが、例えば、富士山利用者負担制度専門委員会の平成25年12月付け「報告書」では、「利用者に負担をお願いする際には、公平性の観点から対象者の全員が支払うことが望まれる。」としています。
また、同委員会における議論では、「強制的に徴収すべき」という意見と、「任意の協力金とすべき」という意見に分かれたとし、「自治体が関与して全員から強制的に徴収するためには、法定外目的税として徴収することになる。法定外目的税として徴収するには、…『利用者との関連性』『課税客体の捕捉と徴収の確実性』『徴収方法の簡便性・徴収コストの低廉性』が求められる。」としています。
しかし、続けて、「静岡県が平成14度に『富士山の適正利用のあり方検討委員会』において、富士山の利用者から法定外目的税を徴収する方法やその実行可能性について検討した結果、正規の4つの登山道以外にも多数の場所から登山できる富士山において、すべての登山者を捕捉し、全員から徴収することは不可能であるとの結論に至った。これらの課題が克服できれば、富士山における法定外目的税の徴収も可能であるが、現時点でも当時と同じ課題が残されている。」として、このようなことを総合的に勘案した結果、次のような結論をまとめています。
- ○ 平成 26 年は任意の協力金という形で実施する。
- ○ ただし、公平性を保つため、法的には強制力はないが、できる限りすべての対象者から協力をいただくことを目標とする。
- ○ 将来的には公平で効率的な制度にするため、強制徴収も視野に入れ、条例制定を含め検討していく。
- ○ より公平で効率的な制度にするため、必要に応じて見直しを行う。
このように、あくまでも「任意の協力金」と位置付けられ、なかなか「税」という形では実現してこなかった「富士山入山税」ですが、最近になり、ようやく法定外目的税としての義務化の動きが本格化しています。
すなわち、静岡、山梨両県などで構成され、世界文化遺産・富士山のあり方を検討する「富士山世界文化遺産協議会」の作業部会において、法定外目的税として義務化する方針が確認され(令和2年11月16日)、実現に向けて動いている模様です。
もっとも、当時の報道において、「早ければ令和4年夏から導入」とされていたところですが(産経新聞web版「富士山入山料、税金で義務化へ 静岡・山梨両県、条例化し令和4年夏にも」(令和2年11月16日))、その後「導入に慎重な自治体もあるため、令和4年度からの実施は厳しい状況」との報道もあり(同「富士山に入山税導入へ 登山マナー向上へ講習義務化も」(令和3年4月3日))、今後の動向が注目されます。