富士泥棒

ところで、皆さんは「富士泥棒」という言葉をご存知でしょうか?

遡ること江戸時代、富士山信仰の大衆化に伴い、富士山に登拝する一般の「道者」が増え、庶民による富士山信仰、いわゆる「富士講」が隆盛しました。「講」を組むことで、一般庶民も富士山を目指せることになったというわけです。

17世紀に長谷川角行(かくぎょう)(1541~1646)によって開かれた富士講は、代々の弟子たちの活動もあって、江戸時代中期には、江戸だけで808講、関東一円では20万戸を超える富士講道者(どうしゃ)がいたといわれています(もっとも、実態よりもかなりオーバーな表現とはいわれていますが…。菊地俊朗『山の社会学』10頁(文藝春秋2001)参照)。

麓の町には「御師町」という富士山信仰の一大聖地ができ、江戸から旅してくる各講の道者で大変賑わったそうです。江戸から4、5日かけて富士吉田や富士宮にやって来た道者たちを、現代の旅行代理業社ともいえる御師(おし)の手配によって、先達や強力が案内につき、彼らを登山させたといいます。

しかし、実際に山に登るには、坊入(ぼういり、宿泊料)、山役銭(やまやくせん、入山料)、円座銭(えんざせん、休憩料)が取られたほか、信仰登山ですから禊料(みそぎりょう)も必要であり、はては杖代等といったさまざまな名目で散財させられることから、「富士泥棒」などという言い方が生まれたといわれています(菊地・前掲書11頁)。

現代において、これらの一部を入山税として税金の形で徴収することも十分にあり得るところだとは思われますが、いずれにしても富士泥棒などといわれないように、徴収されるべき金額はもちろん、その使途も透明であることが望まれますね。次回は、江戸時代に起きた富士山大噴火についてご紹介します。


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