東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(TOCOG)の森喜朗会長の「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」などの発言が、国内外で波紋を広げました。この発言が女性蔑視だとしてマスコミで大きく取り上げられ、また、それがオリンピック憲章に反するのではないかといった話題も持ち上がり、世論に押される形で森会長が辞任をするに至りました。今回はこうしたジェンダー問題と租税法について、考えてみたいと思います。

世界的に最低水準にある我が国のジェンダー・ギャップ指数

オリンピック憲章の「オリンピズムの根本原則」には次のようなルールが謳われていますが、森会長の発言は、かかる原則に反するというわけです。

「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」

さて、ジェンダー問題について、世界的に、我が国は先進諸国内において極めて低い評価を受けています。世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)が発表した、世界各国の男女平等の度合いをランキングした「ジェンダー・ギャップ指数(2019年)」では、調査対象153か国のうち、日本は121位であり、110位だった前年からも順位を落とし、過去最低となりました。女性の政治参画の遅れが響き、先進国では最低水準となっています(2019年12月17日付け日本経済新聞)。

これは、我が国の政府の政策が必ずしも国民に十分に浸透していないことの表れなのか、あるいは、政府の掲げる女性活躍社会というフレーズが、単なるお飾りの看板に過ぎないことを意味するものか意見の分かれるところでしょう。