税務職員が行う「調査」とは何でしょうか。国税通則法は調査についての定義規定を設けていませんが、およそ多くの人は、いわゆる納税者本人に対する本人調査、納税者の取引先や関連企業等を調査する反面調査、金融機関や証券会社、郵便局等を調査する金融機関等調査などを想起されるでしょう。また、調査には「実地調査」と「机上調査」がありますが、今回は「机上調査」について考えてみたいと思います。
「調査」とは何か
さて、調査については、例えば、国税通則法74条の2《当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権》1項1号が本人調査、同項3号が反面調査を規定しており、反面調査の中には金融機関等調査なども含まれると解されています。これらの調査をあわせて、「調査」と呼ばれているのです。
もっとも、税務職員が税務官公署において机の上で行ういわゆる「机上調査」は、上記の国税通則法74条の2等に規定する調査には含まれていません。なぜなら、上記の国税通則法74条の2等の調査は全て質問検査権行使に基づく調査であるのに対して、机上調査は質問検査権を行使するものではないからです。
かように考えると、「調査」とは、①質問検査権の行使による調査と、②質問検査権の行使によらない調査があることが判然とします。質問検査権の行使によらない税務官公署内部における「机上調査」が、果たして国税通則法上の「調査」に含まれるのかどうかについては議論のあり得るところです。この点、これまでの学説上の通説は、「机上調査も調査に含まれる」と解してきました。
机上調査と更正処分
例えば、国税通則法24条《更正》では、次のように、「調査により」更正すると示されているため、法は、更正処分の前に必ず調査が行われなければならないことを要求していると理解すべきとなりましょう(下線筆者)。
国税通則法24条《更正》
税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。
すなわち、更正処分の要件として調査がなければならないのですが、ここにいう「調査」には机上調査も含まれると解されているわけです。税務職員が行う机上調査を、かかる国税通則法24条の調査であると理解すれば、税務職員は必ずしも納税者本人や反面調査等の実地調査を行わずして、すなわち、質問検査権を行使せずとも更正処分を行うことができると解されることになります。
現に、これまで課税実務が机上調査による更正を行ってきたとおりです。なお、更正の請求による還付手続きも、減額更正処分であるから調査が実施されていることになります。しかしながら、ここでも必ずしも実地調査がなされる必要はないと解されており、机上調査も国税通則法上の「調査」に該当すると理解されています。