「地金」の売却による所得は「資産の譲渡による所得」であることから、所得税法上、譲渡所得に該当します。ただし、営利を目的として継続的に売買をしている場合の所得は、譲渡所得とはならずに、その実態により事業所得又は雑所得として総合課税の対象になりましょう。地金というと高級な金属というイメージがありますが、今回は「地金」について考えます。

貴金属としての「地金」

金投資口座や金貯蓄口座などからの利益は金地金の現物の譲渡とは異なり、実態は金融取引に近いことから、金融類似商品の収益として一律20.315%(所得税及び復興所得税15.315%、地方税5%)の税率による源泉分離課税となっていますが、そもそも、地金とはどのようなものをいうのでしょうか。

そもそも、「地金」とは、辞書によれば「①細工物の材料にする金属、②めっきの土台の金属、③貨幣などの材料に溶かして使う金属材料」などを指すようです(『大辞林〔第3版〕』)。

さて、この地金ですが、江戸時代には小判として流通したように、昔から価値あるものと重宝されたのですね。

もう一つの「地金」

しかし、高額な地金といえば、貴金属のみを指すわけではありません。ときには「金魚」を指すこともあるのです。

江戸時代初期、和金(ワキン)からの突然変異によって尾鰭が立ち上がった魚を淘汰選別し、尾張藩士・天野周防守が種として固定化したのが、金魚の起源といわれています。

以降、名古屋地方で飼育され続けてきた地金魚(土地の金魚という意)ですが、昭和33年に愛知県の天然記念物に指定された希少品種となっています(ネット記事「金魚の品種(種類)カタログ」http://www.sakura-nishiki.com/kingyocatalog.html〔令和2年12月9日訪問〕)。江戸時代からのものというのですから驚きです。

なかでも、突然変異から生まれた「地金・六リン」は、生まれた後に鱗を剥がし色素細胞を除くことによって、体の白さを調節しているといいます。尾鰭がくじゃく型をしていることが「地金・六リン」の大きな特徴であり、鑑賞するにふさわしい高級魚と位置付けられています(ネット記事「優勝した金魚に200万円!?『高級金魚』の価格がさらに高騰するのはナゼ?」https://precious.jp/articles/-/6163〔令和2年12月9日訪問〕)。

さて、金魚たる「地金」を譲渡した場合、いずれも資産の譲渡として、所得税法の譲渡所得に該当するものの、営利を目的として継続的に売買をしている場合の所得は、譲渡所得とはならずに、その実態により事業所得又は雑所得として総合課税の対象になることもあるという点では、貴金属たる「地金」の課税上の取扱いと異なるところはありません。

もっとも、金魚の方の「地金」は「じきん」と読むのに対して、貴金属は「じがね」と、読み方では異なることになります。

読み方一つで貴金属か金魚か大きく異なることにはなりますが、地金(じがね)も地金(じきん)も、その「本質」はいずれも高級品であるという点では共通性がありそうですね。ちなみに、地金には、「本質」という意味もあります。


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