4.審判所の判断

(1)法令解釈

消費税法施行令45条3項は、事業者が課税資産の譲渡等に係る資産と非課税資産の譲渡等に係る資産とを同一の者に対して同時に譲渡した場合において、これらの資産の譲渡の対価の額が課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないときの消費税の課税標準は、資産の譲渡の対価の額に、資産の譲渡時における当該課税資産の価額と当該非課税資産の価額との合計額のうちに当該課税資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とする旨定めている。しかしながら、一旦課税資産の譲渡の対価の額が譲渡当事者間で合意されたといえる以上、譲受人の主張する事情だけでこれを不合理であるとして当該課税資産の譲渡の対価の額が異なると判断するためには、当該課税資産の譲渡の対価の額の算出方法に合理性が認められないなどの事情がなければならないというべきであり、この理を課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額との区分についても当てはめるべきである。

(2)認定事実及び検討

  • ①本件建物価額について

本件売買契約書は、いわゆる処分証書[1]に該当し、その成立の真正に争いはないことから、作成者である契約当事者が通謀して租税回避の意思や脱税目的等の下に故意に実体と異なる内容を当該契約書に記載したなどの仮装行為が認められない限り、作成者である契約当事者双方によって、本件売買契約書に記載されたとおりの法律行為がなされたものと認めるべきであり、請求人と売主の間に特殊な利害関係はなく、求人と売主が通謀して故意に実体と異なる内容を本件売買契約書に記載したなどの事情は認められない。

したがって、請求人及び売主は、本件建物について、本件建物価額で売買することに合意し、本件売買契約の締結に至ったものと認められることから、請求人及び売主が、本件建物について授受することとした対価の額は、本件建物価額であると認めるのが相当である。

  • ②本件建物価額の算出方法の合理性について

本件建物は、建築基準法における容積率を超過している既存不適格建築物であることや、売主が取得してから全く使用されておらず性能低下、劣化、汚損等があり使用に耐えないなど、様々な瑕疵があり、価額の算出が困難であったことが認められる。このような事情から、本件建物価額は、請求人及び売主が総額で合意した土地建物の価額から、本件土地の価額を差し引くことにより算出されたものであり、本件土地の価額は、売主における帳簿価額を基準として、本件土地の固定資産税路線価に基づく評価額とも比較検討の上、決定されたものと認められ、これを不相当とする事情は見当たらず、本件建物価額は、合理的に区分されたものと認められる。

  • ③小括

上記のとおり、本件建物の課税仕入れに係る支払対価の額は、本件建物価額によるべきである。

(3)請求人の主張の排斥

請求人は、一般的に土地取引における実勢価格は更地の状態で算出されるものであり、本件売買契約書に記載された本件土地の価額から本件建物の解体費用を差し引くと、本件土地の実勢価格は本件売買契約書に記載された本件土地の価額を下回る、また、本件建物の基礎及び躯体部分の価値を試算すると、本件建物価額以上の金額となり、各固定資産税評価額の価額比を基にあん分して算出した建物価額に近い金額となると主張する。

しかしながら、そもそも本件売買契約は更地である土地のみを目的物とするものではなく、土地建物を目的物とする売買契約であって、本件売買契約書に記載された土地建物の総額は、本件土地上に本件建物が存することを前提とした価額であるところ、土地建物の総額は、もともと売主が自身で負担することを想定していた本件建物の解体費用を負担することなく、土地建物を現状有姿で引き渡すことを条件として、当初7千万円程度とされていた売主の売却希望価額が、請求人の提示額である5千5百万に減額されたものである。

そうすると、本件売買契約書に記載された土地建物の総額の内訳である本件土地の価額から、本件建物の解体費用を差し引くことを前提とする請求人の主張は、合理性を欠くものであり、これを採用することはできない。


[1] 処分証書については、本稿第12回(https://kaikeizine.jp/article/20823/3/)参照。