5.解説

消費税法施行令45条3項は、土地建物を一括して譲渡する場合、契約書上には土地建物全体の売買総額は記載されるものの、土地建物それぞれの価額が明示されないケースを想定して設けられたものである。消費税の納税者の立場から見れば、土地建物の一括譲渡の場合、売主は、消費税の納税額を低く抑えるためなるべく建物の価額を小さくしたいと考えるであろうし、反対に買主は、なるべく建物の価額を大きくして多額の仕入税額控除を計上したいと思うであろう。そうすると、本件のように、契約書上は土地建物それぞれの価額が明示されていても、固定資産税評価額等を使ってあん分した方が有利と考えられる場合、契約書とは異なる価額で申告する納税者も現れる可能性があり、現に課税当局との争いとなった事例が複数存在する[2]。過去の判決・裁決例では、裁判所及び審判所は、本件と同様、特段の事情がない限り契約書に記載された建物価額に基づくのが相当と判断[3]している。

上記の争いには、消費税法の基本的性格上の問題、すなわち譲渡人側の課税売上げの金額と譲受人側の課税仕入れの金額の一致は必ずしも求められていないということが背景にあると思われる[4]。ただし、両者が異なり得るというのは明らかに不合理であり、令和5年10月の適格インボイス制度導入により、この辺りの問題は一挙に解決に向かうこととなろう。


[2] 前掲注(2)の裁判例は、「消費税法の適用に当たり、(中略)課税資産の譲渡等譲渡側と譲受側との関係において、当事者の意図した契約等の金額と同一になることを予定しているというべきである」と判示している。

[3] 裁判例として、前橋地裁平成28年9月24日判決及びその控訴審である東京高裁平成29年5月11日判決(確定)、裁決例として、国税不服審判所平成20年5月8日裁決がある。

[4] ただし、本件と異なり、売主側が請求人となった国税不服審判所平成31年3月26日裁決では、請求人の行ったあん分方法は合理的でないとして、土地と建物の固定資産税評価額により按分すべきと判断している。


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