IPOの全体像を理解せずに漠然と対応するのは、見えないトンネルを進むようでしんどいものです。本記事では、IPOのスケジュールの全体像、自分が担当するところがどういったところなのか、従業員の目線も踏まえて解説してまいります。
目次
- スケジュールの大枠
- 各期に必要なこと
- 予備調査とは?
- まとめ
1.スケジュールの大枠
IPOを始めてから終わるまでに要する期間をまずは理解してみましょう。マザーズなど一般投資家向け市場への上場は、ざっくり3~5年、最低3年かかります。これは上場するまでに2年間はすでに出来上がった仕組みで無事に運用できている状況を経る必要があるからです。かなり長期戦であることがわかりますね。
IPOの審査は厳格で「まあいいや」が通じない中、仕組みの構築に重要な漏れがあると、それだけで上場するまでに1年伸びてしまう怖さがあるということです。ただでさえ長期戦なものが年単位で伸びる可能性があるということです。IPO審査の対応におけるモチベーションや対応コストの負担が長引いて継続する辛さがあります。しかも審査をクリアすることは難しい。IPOが大変だと言われる所以です。
対して、プロ向け市場である東京プロマーケットは、ハードルがグンと下がります。ざっくり2年半、最低1年半といったところです。四半期開示や内部統制がないため負担がそもそも少ないことが主たる理由です。
では、従業員としてその辛く難しいと言われるIPO対応がこの長期間ずっと負荷が大きいままかと申しますと、そんなことは無いのでご安心ください。具体的な各期のやるべきことを見て安心しましょう。
2.各期に必要なこと
仕組みづくりの一つ一つの意味合いについては別の記事にて解説していきます。ここでは、ざっくりとスケジュールの全体像とご自身の対応範囲を知りましょう。ご自身の担当範囲はどのあたりでしょうか。
会社全体としては、たくさんのやることがありますね。経営者や管理部門は継続して負荷を感じそうであることが表からわかります。
これに対して、その他の従業員は、限られた範囲を一時期だけ担う形となります。上記の表で対応する範囲は「内部管理体制>J-SOX」の部分のところだけです。その他の従業員にとって最も負荷が大きいのは、直前々期のN-2期です。負荷に感じるのは、無かった仕組みを設けるためと、慣れない仕組みを運用し始めるためです。
仕組みを作るのは現場の管理職です。管理職も仕組みの作り方は指導を受けて対応をすることが出来ます。方法もわからないのに放り投げられることは基本的にはないでしょう。内部管理体制の仕組みの構築は、業務フローを整理して理解するところから始まります。業務フローが整理できたらリスクを認識します。そしてリスクに対応して必要な対応を整備します。これらを慣れている監査法人やコンサルティング会社のチェックや指導を受けながら対応していきます。
管理職ではない方は、仕組みづくりによって決まった方法について対応するだけで済みます。この決まった方法について対応するというのは運用というニュアンスになります。上場会社であれば求められる内容であり、これはすなわち、上場会社の従業員は対応していることだということです。
このため、従業員の立場からは、仕組み化という観点では負荷は極端に辛いものではないでしょう。むしろ、ルールが明確になることで組織が強くなり、働きやすくなったと感じる方も多いです。IPOを理由に売上や利益追求のモチベーションといった雰囲気が組織で発生した際は、馴染まないと従業員が負荷を感じるため、不満を覚える方が多い印象があります。
仕組みがなかったころと比べると不自由さを感じる方もいるかも知れませんが、仕組みが出来ることによる利便性の向上、上場会社となれることで信用を得られるメリットと比較して、合理性を理解することも大切です。