第27回は、IPOを目指して経営人材を採用する際に、職務経歴書で確認するべき3つのポイントについて解説します。経営人材の採用は重要かつ難易度も高いため、本稿を参考にして、採用の精度を高めていただければ幸いです。

IPOを目指している企業が更に成長するためには、既存メンバーでは難しく、経営人材の力が必要となる時期が来ます。第25回ではCOOの選任について、第26回ではCFOの選任について紹介しましたが、本稿における経営人材の定義は、取締役と執行役員を想定しており、COO、CFO、CTO等のCXOも含めています。当然、会社の規模や状況によっては、部長に大きな権限を移譲しており、部長も経営を担う立場である企業は、部長も経営人材として定義いただいて問題ありません。

 

経営人材の採用は何回も経験することではないため、非常に難しく、失敗してしまうことも多いです。加えて昨今、インターネット上に様々な立場の方から情報が発信されており、情報感度が高い経営者ほど、様々な情報を得ているため、どのような情報を信用して良いのか、判断することが難しくなってきています。当然、有益な情報も多いですが、情報を発信している方の属性や、会社のフェーズ、立場、成功経験、失敗経験等を鑑みた上で、自身にとってその情報の有益性を判断する必要があります。

以下では、経営人材を採用する際に、職務経歴書で確認するべきポイントについて解説していきます。

1.直近2社の入社理由と退職理由を確認し、仮説を立てる

職務経歴書を確認する際は、優先的に直近2社の入社理由と退職理由を確認しましょう。大学を卒業してから全てのキャリアを確認される方もいらっしゃると思いますが、1社目と直近の会社での役割やご本人の考え方も大きく異なるはずですので、直近2社の状況を確認することにより、その方の考え方や今回の転職で求めることを把握することが可能です。

 

何故その会社を選んだのか、会社が属する業界、会社の事業内容、会社のステージ、仕事内容、年収、ポジション等、その方がどのような点にこだわりを持っていたのか確認しましょう。そして、退職理由もポジティブな内容での退職か、ネガティブな内容での退職か確認しましょう。当然、職務経歴書に記載されていないケースもありますので、記載されていない場合は、何故その方がその会社を選定したのか、そして退職されたのか、職務経歴書から自身の仮設を立てましょう。

2.直近2社の担当する役割や業務が、当社が期待する役割に合致するか確認し、過去の肩書は参考程度に捉える

直近2社で担っていた役割や業務で得た経験を確認し、自社が求める役割を担えるか判断しましょう。当然、期待する役割と全く同じ役割を経験されている方と出会えるのは稀ですが、職務経歴書から読み取れる情報を利用して、どの経験が求める役割に役立つか自身で判断しましょう。例えば、5社経験されている候補者がいた場合、1社目の経験だけが求める役割と合致しており、それ以外の会社では全く異なる経験を積まれている場合、期待する役割で成果を出してもらうことは難しいはずです。よって、直近2社の経験を確認しましょう。

 

最近ベンチャー企業やスタートアップの方とお会いして気づくことが、CEO、COO、CFOといったCXOの肩書を持つ方が増えていること、加えて、執行役員、部長、支社長等の肩書も目にします。その場合、その方の会社での役割やマネジメントしている人員数を確認しましょう。COOや執行役員と肩書は立派ですが、実際は自身一人だけ、もしくは自身+派遣社員もしくはアルバイトのみといった状況もあります。大事なことは、肩書ではなく、肩書に見合った実力を有しており、自社に転職して成果を出してもらうことです。肩書だけ立派でありながら、実力が伴わないケースが散見されるので、肩書は参考程度に留めるように注意しましょう。