審判所の判断

1 「正当な理由があると認められる場合」とは

不納付加算税は、源泉所得税の不納付による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適正に徴収及び納付をした納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、源泉所得税の不納付による納税義務違反の発生を防止し、適正な徴収及び納付の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。

そして、上記の趣旨に照らせば、源泉所得税の不納付があっても例外的に不納付加算税が課されない「正当な理由があると認められる場合」とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記の不納付加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に不納付加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である。

 

2 本事案についての判断

①   本件店舗等の賃貸借に係る連絡は管理人と行っており、管理人と平成23年の夏に接触した後の接触は、本件免除証明書の提示を受けた平成24年4月であった。更に、Xが賃貸人と接触した事実は認められず、その必要性もなかった。②   本件賃貸借契約に係る月々の賃借料は、一貫して本件賃貸人口座に振り込まれており、賃貸人から領収書等住所が分る書類が交付された事実は認められず、住所の変更を知り得る状況にはなかった。これらのことから、賃貸人が非居住者に該当することになったことをXが直ちに知り得る状況にはなかったと認められる。③   Xは、平成24年4月に管理人から連絡があって初めて、賃貸人が非居住者に該当することとなったことを了知するに至ったと認められ、平成24年1月及び2月に賃貸人口座に振り込んだ各賃借料について、所得税を源泉徴収すべきであったことを認識し、現実に、同年4月に納付しており、管理人から連絡後、遅滞なく納付する意思を有していたものと認められる。④   そうすると、Xは、賃貸人が非居住者に該当することとなった事実を直ちに知り得ていれば、当然に法定納期限内に納付が行われたであろうことは、十分推認され、本件各源泉所得税額の納付が法定納期限後となった原因は、賃貸人からの連絡が遅れたためであると認められる。⑤   以上のことからすると、Xには、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったというべきであり、不納付加算税の趣旨に照らしても、なお、不納付加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に該当するというべきである。したがって、Xには、本件各源泉所得税額を法定納期限までに納付しなかったことについて、「正当な理由があると認められる場合」に該当するとするのが相当である。

コメント

今回の事案は、源泉徴収漏れが発生したことについて、様々な客観的な事実関係を積み上げ「正当な理由がある」ことを立証し、不納付加算税が取り消されたものであり、今後の参考となる裁決と思われます。

ただし、実務上は源泉徴収漏れが生じないような対策が必要となることは言うまでもありません。最近では日本人社員が海外勤務となり非居住者となるケースもよく見られます。

非居住者に対する支払いの源泉徴収漏れは税務調査で指摘されることが多く、追徴税額も多額となる傾向があることから、賃貸人の居住形態の確認は必須となります。


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