今回の事例は、日本国内に設けた拠点が恒久的施設に当たるかどうか争われたものです。米国在住の非居住者である納税者が、米国から輸入した自動車用品を日本国内にあるアパート等に保管し、インターネットを通して国内の顧客に販売していました。裁判所は、当該アパート等を恒久的施設に該当すると認定し、アパート等を通じて行った事業は国内源泉所得とされ、課税対象とされました(平成27年5月28日東京地裁、平成28年1月28日東京高裁、平成29年4月14日最高裁)。

「恒久的施設(PE)なければ課税なし」の原則

非居住者が日本国内で行う事業から生じた所得は、日本国内に恒久的施設(Permanent Establishment、以下「PE」)がない限り日本の所得税は課されません。もし、PEを有していれば、PEに帰属する所得が日本の所得税の課税対象となります。

このように、非居住者等が国内で事業を行う場合、PEの有無で課税関係が大きく変わります。

恒久的施設の代表例としては支店や事務所などが挙げられます。一方、準備的又は補助的な性格のものは恒久的施設に該当しないとされています。例えば、単なる保管や引渡しのための施設であれば、恒久的施設には当たらないこととなります。

事案の概要

  1. 米国在住の非居住者である納税者Xは、米国から日本に輸入した自動車用品を日本国内にあるアパート及び倉庫(以下「本件アパート等」)に保管していた。そして、Xはウェブサイト又はメールにより日本の顧客から注文を受け次第、日本国内の本件アパート等に勤務している従業員に対し商品発送の指示をしていた。
  2. 本件アパート等では、従業員が商品を保管し、梱包した上で発送し、返品された商品の受け取りを行っていた。また、商品を発送する際、独自の日本語取扱説明書を同梱することもあった。
  3. 本件事業のホームページには、本件アパートの住所が表示されていた。さらに、販売活動で利用していた楽天市場は日本国内に事業所があることを出品の条件としていた。
  4. Xは、本件アパート等での業務はXの指示に基づく輸入商品の保管、顧客への発送、返品された不良品の保管及びメーカーへの返品等の準備的・補助的なものであることから、本件アパート等はPEには該当しないとして、日本において所得税の確定申告を行っていなかった。
  5. それに対して国税当局は、本件アパート等における活動は、販売事業の本質的かつ重要な部分を形成する一連の事業活動であり、単なる保管や引渡しといった準備的又は補助的な性格の活動を超えたものであると判断し、PEに該当するとして所得税の決定処分を行った。