■個人住民税の注意点
住民税の所得額や税額の計算、控除制度は所得税と似ています。しかし、先ほど見た通り、まったく同じではありません。この他、次のような点にも注意が必要です。
●18歳でも2023年6月から住民税を払うことも
住民税の非課税世帯の条件は、次のようになっています。
【引用元】個人住民税(東京都主税局)
ここで注意したいのが「未成年者」です。2022年4月1日に成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。つまり、未成年者の定義が変わったのです。これは住民税にも影響します。
住民税では、その年の1月1日時点で納税義務者や非課税を判断します。未成年者は、2022年1月1日時点なら「20歳未満」ですが、2023年1月1日時点だと「18歳未満」になります。結果、18歳と19歳の非課税の条件は、次のように変わるのです。
市区町村の条例で定める非課税の条件の多くは、135万円よりもはるかに小さい金額です。今年1月1日時点で18歳の人は、2022年分が非課税でも、来年6月から住民税を納める可能性があります。
【参考】4月から成年年齢が18歳に引き下げ!税金は何が変わる?注意点も解説
●「退職」「国外移住」は原則まとめて納付
- 「年の途中で退職することになった」
- 「海外赴任で国外に移住することになった」
というケースがあるかと思います。このようなときでも、退職後や国外移住後に納期が到来する住民税は納めなくてはなりません。住民税の納税額は決まっています。特別徴収か普通徴収かで、納付回数やタイミングが異なるに過ぎません。
退職後の住民税は、原則、次のような取り扱いになります。
国外移住の場合は原則、最後の給与からまとめて徴収するか、移住前に本人が一括納付するかになります。ただし「納税管理人がいる」などであれば、国外移住後でも納付が可能です。
●非課税でも退職所得に住民税はかかる
住民税の非課税世帯に該当すれば、均等割・所得割の両方あるいは所得割だけが非課税になります。ただし、退職所得は非課税になりません。退職所得は支給の際、所得税とともに源泉徴収され、そのまま地方自治体に納められます。
他の所得は前年の所得額を基準に計算されます。この違いは意識しておいた方がいいでしょう。
余談ですが、通常、退職した翌年の6月からも住民税が発生します。退職した年である前年に所得があるからです。収入があるならいいのですが、「退職してからは無職」「退職後に独立したけど初期投資でお金がない」といった状態だと、住民税の納付に困るかもしれません。
●退職直後は配偶者控除や基礎控除の漏れに注意
退職した翌年は、住民税の控除を確認しましょう。「配偶者控除」「基礎控除」など、合計所得金額で適用の可否が決まる控除制度が所得税にも住民税にもあります。しかし、この「合計所得金額」の意味は、所得税と住民税とで次のように異なるのです。
- ・所得税の合計所得金額…今年1年間に生じた所得すべて。退職所得も含む。
- ・住民税の合計所得金額…前年1年間に生じた所得すべて。現年分離課税である退職所得は含まない。
背景には「納税義務の成立のタイミングの違い」があります。所得税は所得が生じた年の12月31日に成立しますが、住民税は翌年1月1日なのです。
「給与所得が800万円、退職所得が1800万円」という例で考えてみましょう。
所得税では合計所得金額を2600万円と計算します。そのため、配偶者控除も基礎控除も受けられません。
一方、住民税での合計所得金額は800万円です。結果、配偶者控除も基礎控除も受けられます。さらに、人的控除の条件に当てはまれば、住民税独自の制度である調整控除も適用可能です。合計所得金額が2500万円以下だからです。
「確定申告をしていれば大丈夫」と思うかもしれません。残念ながら、この合計所得金額の差異を反映させる項目が、確定申告書にはありません。配偶者控除や基礎控除を受けるなら、住民税の申告が必要です。