国家公務員の処分には「懲戒」と「矯正」がある

公務員の処分には、国家公務員法に規定された「懲戒処分」と、今後の改善・向上を図るための「矯正措置」がある。

「懲戒処分」の量定は、重い順番に

  • 1. 免職=職員の身分を剥奪し公務員関係から排除
  • 2. 停職=1日以上1年以下の期間、職員としての身分を保有させたまま職務に従事させない処分
  • 3. 減給=1年以下の間、俸給(基本給)の月額5分の1以下に相当する額を給与から減額
  • 4. 戒告=責任を確認し将来を戒める処分

「矯正措置」は、任命権者による部内処分という位置づけだが、量定は重い順に

  • 1. 訓告
  • 2. 厳重注意
  • 3. 注意

となる。

東京国税局職員が持続化給付金の詐欺事件で逮捕されるのは、2020年12月に逮捕され、その後有罪判決が確定した甲府税務署の20代の職員に続いて、今回で2人目だ。

在宅勤務などで希薄になる職場での人間関係

持続化給付金の請求に関しては、確定申告の書類を添付する必要がある。逮捕された塚本容疑者は、徴収部門にしか居たことがなく、おそらく国税職員として確定申告業務には携わったことがないと推察される。もしかしたら、税務大学校時代に確定申告の手続きや書類の作成方法などは学んだかもしれない。ただ、その程度だ。

前述した職歴に加え、まだ駆け出しの国税職員だけに、国税職員としての責任感や正義感、倫理観が植えつけられないまま前代未聞の詐欺に加担してしまったものと思われる。

筆者としては、コロナ禍で公務員も在宅勤務が推奨され、自宅で仕事ができるようになったことも大きく影響しているのではないかと思っている。

コロナ禍で先輩との飲みもなくなり、対面での雑談などが極端に減っている。やはり、対面でのやりとりから、後輩は先輩から学ぶことも多い。昔、国税職員から仕事終わりの飲み会で、先輩から調査テクニックなどを学んだという話をよく聞いた。

在宅勤務が悪いわけではないが、同じ空間にいることで、組織としての文化や仕事の仕方を学ぶ。IT化、デジタル化対応が進み、多様な働き方が進めば、こうした人間関係の希薄、組織文化の継承の難しさに直面するものと思われる。

個人的には、今回の事件を知ったとき、国民の個人情報を扱い、行政を担っていく公務員が、今後、どのように倫理観や組織の文化を学んでいくのかを注目したいと思っている。