持続化給付金詐欺事件に、東京国税局鶴見税務署の職員が関与しており逮捕された。本人は自業自得だが、この逮捕を受けて定年退職間際に責任をとらされるのが署長だ。

事件での署長の処分は?

警視庁はこのほど、「持続化給付金」をだまし取ったとして東京国税局の職員など7人を逮捕した。大々的にマスコミ報道されたので、事件の概要はすでにご存じの方もいるだろう。なので、概要はここでは省くが、この事件で逮捕された東京国税局鶴見税務署の職員、塚本晃平容疑者(24)のおかげで、上司である鶴見税務署長などの幹部職員は責任を取らされ、処分されることになるだろう。

管理責任があるとはいえ、筆者が気の毒だと思うのは、定年まで残り1カ月を切った鶴見署長だ。

国税組織の事業年度は、7月から翌年6月末まで。そのため、7月に人事異動がある。基本的に、国税職員は2年おきに異動する。ただ、税務署長などの幹部は、1年で異動か定年退職というルートをたどる。

鶴見税務署長は、これを最後に定年退職するポジション。つまり、残り1カ月を切った定年退職を目前にこのような事件が起きたわけだ。

塚本容疑者の税務署でのキャリア

逮捕された塚本容疑者の職歴は、平成29年に高校卒業後、東京国税局に採用された普通科77期。高卒で国税職員になる場合、一般的には普通科採用の道をたどる。

普通科の場合、税務大学校で国税職員として必要な知識を身に付け、その後、実務の現場に配属される。塚本容疑者も平成30年には藤沢税務署の徴収部門に配属され、3年ここで過ごす。そして、令和3年7月から鶴見税務署の徴収部門に配属された。コロナ禍とあって、在宅勤務も少なくなく、配属1年では、それほど署内でも知り合いは少なかったと思われる。税務署長ともほとんど面識がなかったのではないか。

税務署長の多くは「自分が署長の間は大きな不祥事は起こさないでくれ!」と祈っていると言う。税務署長は別名「支店長」と言われ、全ての責任を一身に受ける。塚本容疑者のことをほとんど知らなくても、不祥事となれば、最高責任者として懲戒処分となるのが公務員の責任の取り方だ。

国税OB税理士と話をしていると「可哀そうだが、誰かが責任を取ったことで、政府としては国民にケジメを示すことになる。現在の署長が責任を取らないと、次に配属される署長が責任を取ることにもなりかねない。だからこの時期に、国税当局では不祥事などの事件が公になることが少なくない」と言う。

うがった見方だが、塚本容疑者は、前配属先の藤沢税務署勤務時代から給付金詐欺に加担していたのではないか。そうなると、藤沢税務署時代に悪事が発覚していたら、その当時の藤沢税務署長が責任を取っていた。たまたま、逮捕された時期がズレたから、鶴見税務署長が処分されるだけの話かもしれないということだ。

今回の事件では、処分内容にこそ差があるものの、税務署長、総務課長、徴収部門の課長の3名はほぼ処分対象だろう。処分としては、署長が「減給」、それ以下の人が「戒告」「訓告」となるものと予想される。