最近、一般的になってきた不動産投資。資産管理のために、サラリーマンでもはじめる人が増えている。とはいえ気になってくるのが税金面。不動産所得の増加に伴い、累進課税による税金(所得税・住民税)の増加、そしてそれに連動した社会保険料の増加も絡んでくるため、年収3千万円を超えてくると、不動産投資は一気に 難易度を増す。1棟ものマンションを購入すると、年収3千万円くらいはすぐに超えてくるはずだ。しかし、これを法人化した場合、経費計上、所得分散において、さまざまなメリットを享受することが可能となる。
■サラリーマンが資産管理会社を作るメリット
具体的に、法人設立のメリットを紹介する。
1,個人で購入した場合、個人事業主所得は課税対象となるが、法人で購入し代表者に報酬(給与)を支払うと給与所得控除が受けられ、収入に対する課税対象を減額できる。もしくは、副業規定にてご本人に給与は出せない問題があれば、妻に報酬を支払うこともできる。ただし、妻を扶養にしている場合には、報酬の金額に注意しておく必要がある。
2,共済掛け金を全額経費として計上できるため、役員の退職金の積立や所有する物件の修繕積立金として利用することができ、自然と資産形成ができる。
3.生命保険についても、個人の場合、生命保険料控除が一部しか認めらないが、法人が契約者となり被保険者(法人の役員や従業員)を加入させた場合、支払った保険料の全額もしくは、一部を必要経費として計上できる。
4.税率は、個人として支払う所得税は、所得が多くなればなるほど税率が高くなるという累進課税方式となっているが、法人の場合は、所得に関わらず税率が一定である。
■資産管理会社の具体的な運用方法
続いて、資産管理会社を作りどのように運用するか、実務面を簡単に紹介する。
1.設立した法人に物件を貸し付ける
個人が所有する物件を、設立した法人へ一括で貸し付け、その貸し付け賃料を個人が受け取る方法など、個人で受け取る利益の一部を法人に移転させ、税金の額を圧縮するのが目的である。入居者からの家賃は、一度管理法人に入り、その後、賃借料を個人に支払う。
2.設立した法人にアパートの管理を委託する
管理の委託のため、1.の方法よりも簡単に取り組める。この方式もサブリースと同様、利益の一部を個人から法人へ移転するのが目的である。しかしこの方法は、入居者からの家賃の集金をその法人に委託し、実際に行い管理会社が管理業務を行うことが条件となり、形だけの管理委託は認められない。
■法人設立時にも落とし穴
とはいえ、法人設立にも落とし穴が存在する。損をしないよう、注意が必要だ。
1.法人設立時にコストがかかる
「株式会社」
登録免許税 :最低15万円(資本金の0.7%)
謄本交付手数料:2千円
公証人手数料 :5万円
定款の収入印紙:4万円(電子定款の場合は不要)
「合同会社」
登録免許税 :最低6万円(資本金の0.7%)
謄本交付手数料:2千円
定款の収入印紙:4万円(電子定款の場合は不要)
2.法人は、赤字でも法人住民税の均等割7万円が毎年発生する。
3.法人の決算申告が必要となる。
節税効果を考えたにもかかわらず、それ以上に法人運営のコストが発生するようであれば本末転倒となってしまうため、個人のままで行ったほうが有利な場合もある。ただし、不動産投資による不動産所得は、給与所得と総合課税となるため損益通算ができる(簡単に言うと給与所得から不動産所得分をマイナスできる)ので、確定申告をして、税金が戻る場合もある。
このように、法人設立することが果たしてよいのかどうかは、それぞれが考える将来に向けての目的と、所得水準などの経済的環境によって大きく変わることに留意しなければならない。法人設立の効果が、自身にとってどういう意味をなすかを検討し、専門家に一度シミュレーションをしてもらってみてはいかがだろうか。