法務省は2016年10月13日、12年以上登記が放置されている株式会社、5年以上登記が放置されている一般社団法人または一般財団法人について、12月13日までに登記がなければ「見なし解散」処理する通知を行った。事業を廃止していない場合は、一定の手続きが必要になるため注意したい。

法務省は10月13日、最後の登記をしてから12年を経過している株式会社および、最後の登記から5年を経過している一般社団法人、一般財団法人に対して、事業を廃止していないときは「事業を廃止していない」旨の届出を管轄登記所に申請するよう法務大臣の公告を行い(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00083.html)、管轄登記所から通知書を発送した。

法律の規定により公告の日から2カ月以内、つまり2016年12月13日までに「まだ事業を廃止していない」旨の届出がなく、また、登記の申請もされないときは、同年12月14日付けで解散したものとみなされる。

休眠会社や休眠一般法人に対しては、管轄登記所から通知書が送付されるが、何らかの理由で通知書が届かなかった場合でも、休眠会社または休眠一般法人に該当する法人は、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要がある。

期限内に「事業を廃止していない」旨の届出がなく、かつ、登記の申請もなかった休眠会社、休眠一般法人については、登記官が職権で解散登記する。

「事業を廃止していない」旨の届出については、管轄登記所から送付された通知書を利用する場合は、所定の事項を記載し、これを郵送または持参する。

管轄登記所からの通知書を利用しない場合には、登記所に提出済みの代表者印を押印した書面を管轄登記所に郵送または持参する。代理人によって届出をするときは,法人の代表者印を押印した委任状を添付しなければならない。いずれの場合も、所定の記載事項を正確に記載することが必要で、不備があると適正な届出として認められないことがある。

なお、同年12月13日までに役員変更等の必要な登記の申請をすれば、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしなくても解散したものとはみなされない。

「事業を廃止していない」旨の届出の記載事項としては、株式会社の場合は、商号及び本店並びに代表者の氏名及び住所。一般社団法人または一般財団法人の場合は、名称及び主たる事務所並びに代表者の氏名及び住所を記載する。 代理人が届出をする場合は、その氏名および住所、まだ解散していない旨を記載する。

管轄登記所からの通知書が送付されない場合でも、同年12月13日までに「事業を廃止していない」旨の届出をしなければならない。その届出をしない限り、12月14日付けで解散したものとみなされ、解散手続きが取られる。

管轄登記所からの通知書が届かない理由としては、商号(名称)を変更している、本店が移転しているにもかかわらず、その変更登記がなされていないケースが考えられるので、該当するようなら管轄登記所に確認したほうがよい。

会社法では、株式会社の取締役の任期は原則2年、最長でも10年とされている。取締役の交替や重任の場合にはその旨の登記が必要になるため、株式会社については取締役の任期毎に取締役の変更の登記がされるはず。また、一般社団法人や一般財団法人についても法律の規定により、一理事の任期は2年とされ,同様に少なくとも2年に一度、理事の変更登記をする必要がある。

取締役または理事の変更に限らず、株式会社や一般社団法人、一般財団法人は、その登記事項に変更があった場合は所定の期間に変更登記をすることとされている。みなし解散の登記後3年以内に限り、(1) 解散したものとみなされた株式会社は、株主総会の特別決議によって株式会社を継続、(2) 解散したものとみなされた一般社団法人または一般財団法人は、社員総会の特別決議または評議員会の特別決議によって、法人を継続することができる。ただし、2週間以内に継続登記の申請が必要だ。

職権による休眠会社等の整理を行う理由は、登記していても、経営実体のない休眠会社が多く、休眠会社が犯罪に悪用される可能性も少なくないため。2015年法務省が公表したデータによれば、12年以上更新されていない企業は約8万8千社以上あることが分かっている。休眠会社の分割や転売は、新たに会社を設立するよりも低コストで、審査が甘いなどの問題もあり、詐欺や脱税など経済事件の温床になっているとの指摘もある。この職権による休眠会社の整理は、法務省が役員の任期を延長した2006年の会社法施行により休眠会社の定義が「最後の登記から5年経過」から「12年経過」に変更したのをきっかけに毎年行われるようになった。登記の電子化で実態把握しやすくなったことも大きい。ペーパーカンパニーをいくつも持っているようなオーナー経営者は注意が必要だ。