6月に財務省幹部の人事が固まった。ひと波乱有るのか、記者や関係者の間では話題にはなっていたが、規定路線の順当な人事に落ち着いたようだ。とはいうものの、ガチガチの人事には裏事情も見え隠れする。

各省庁の審議官級以上の幹部人事は、内閣人事局の会合を経て決められる。審議官級以上の幹部は約600人にのぼり、官房長官が適確性を審査した上で、人事局が幹部候補名簿を作成する。閣僚が管轄する足下の人事に影響を持つのは、幹部の任免に当たって首相や官房長官と協議する段階だ。つまり、現状の役人幹部人事は、事実上の官邸主導と言うことになる。現在、内閣府人事局長は、萩生田光一副官房長官。ただ実際の運用に際しては、菅官房長官が強い権限を持つ。
さて、財務省の幹部人事は、6月に固まったが、事務方のトップである佐藤慎一財務事務次官(60)の後任には、福田淳一主計局長(57)を昇格させ、主計局長のポストには、岡本薫明官房長(56)を起用する。国際部門トップの浅川雅嗣財務官(59)は留任し、異例の3年目に入る。このほか、迫田英典国税庁長官(57)の後任に、財務省の佐川宣寿理財局長(59)が就任する(7月5日付)。
財務省キャリアが目指す最高ポストは、指定職8号の事務次官になるわけだが、俸給別にポストをみると、指定職7号は財務官、同6号が主計局長、同5号が官房長、主税局長、理財局長、国際局長、同4号が関税局長となる。国税庁長官は、同7号でポスト的にはナンバー2であるが、国税庁長官を最後に退官という人が多い。ちなみに、国税庁長官から財務事務次官に昇格したのは、最近でも1999年~2000年の薄井信明氏、その前が1996年~1997年の小川是氏、1992年~1993年の尾崎護氏とかなり遡る。なにせ、現職の佐藤慎事務次官は、35年ぶりの主税局長からの昇格で、それ以前の薄井氏以降は、主計局長から事務次官というポストが定例化していた。次期財務次官の福田氏も主計局が長く、2015年7月に主計局長に就任している。
さて、迫田氏の後任として国税庁長官になった佐川氏だが、大阪府豊中市の国有地が大阪市の学校法人「森友学園」に格安で売却された問題をめぐり、たびたび国会で答弁に立ち、適正な価格で売却したと説明していた人物だ。以前、このコラムでも書いたが(「波乱含みの財務省事務次官ポスト!?」https://kaikeizine.jp/article/5741/)、この人事は規定路線が守られた格好だ。
ガチガチの人事になったのは、一説によると、「森友学園」問題で、財務省をあげて官邸を守ったことが大きいとの噂も聞かれる。
ちなみに、佐川氏の国税庁長官昇格人事に関しては、民主党の蓮舫代表も6月29日の定例記者会見で、内閣人事局長である萩生田官房副長官に国会でぜひ聞かせてもらいたいと語っていたが、論功行賞はさておき、実は、2014年の林信光氏から中原広氏、迫田氏と3代続けて理財局長から国税庁長官になっている。ガチガチの人事をすれば、こういった昇格が順当だったのだ。