みなさんは「小規模企業共済」や「中小企業倒産防止共済」という制度をご存じだろうか。 実は、これらの制度を活用すれば、節税しながら貯蓄できる。それだけでなく、将来や経営難にも備えられるため、個人事業主や中小企業経営者のみなさんには、ぜひ押さえておいてほしい。

■小規模企業共済は、個人の確定申告時全額控除できる
小規模企業共済制度は、小規模企業の個人事業主が事業を廃止した場合や、会社等の役員が役員を退職した場合などに向けて、活動資金等をあらかじめ積み立てておくための共済制度である。小規模企業共済法に基づき、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している。小規模企業共済制度の加入条件は、常時使用する従業員が20人(商業とサービス業(宿泊業、娯楽業を除く)では5人)以下の個人事業主や、その経営に携わる共同経営者、会社等の役員、一定規模以下の企業組合、協業組合、農事組合法人の役員などである。
掛金月額は、1,000円から7万円までの範囲(500円刻み)で自由に選べ、掛金は税法上、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として、課税対象となる所得から控除できる。なんとその金額は、最高168万円! 掛金の限度額7万円×12カ月(今年分)+7万円×12カ月(翌年分)まで所得控除可能である。全額控除できることも魅力であるうえ、退職金制度の存在しない個人事業主も、この制度を使えば、自らの退職金を準備することが可能である。
■経営セーフティ共済は、全額経費計上できる
会社が健全経営でも「取引先の倒産」という事態はいつ起こるかわからない。経営セーフティ共済(正式名称:中小企業倒産防止共済制度)は、そのような不測の事態に直面した際に、迅速に資金を貸し出す共済制度である。加入後6カ月以上が経過して、取引先事業者の倒産によって売掛金債権等が回収困難となった場合に、最高8千万円の共済金の貸付が受けられる。共済金の貸付は、無担保・無保証人であり、万が一の場合にも安心して備えられるはずだ。
一時貸付制度も利用できるうえ、掛金は全額法人の経費計上ができるというメリットもあげられる。また、一定の期間継続して掛け金を支払えば、その掛け金はなんと満額が返金されるというのだから、使わない手はない。加入すれば、資金繰り、貯蓄、節税、万が一のときへの備えと、いろいろ活躍してくれるはずなので、ぜひ一度確認してみてはいかがだろうか。ただし、解約の時期によっては、全額戻らないので加入の際には、きちんと検討した上で加入してほしい。
■ある程度の年数が経過すれば、全額本人に戻るのがメリット
「小規模企業共済」の解約手当金は、掛金納付月数に応じて、掛金合計額の80%~120%相当額が受け取れる。掛金納付月数が、240カ月(20年)未満の場合は、掛金合計額を下回るが、20年以上であれば逆に、掛け金により多い金額を受け取れるため、早めの検討がおすすめだ。
「経営セーフティ共済」の解約手当金は、掛金納付月数40カ月以上あれば任意解約でも100%相当額が受け取れる。解約の種類によって、返戻率が異なるのできちんと確認する必要がある。
これらの制度は、毎年の確定申告及び法人決算において節税効果が期待できることに加え、掛金納付月数を満たせば、受取時にもプラスアルファが付く優れた制度である。みなさんも一度検討してみてはいかがだろうか。