売手の留意点(適格請求書発行事業者の義務等)
インボイス制度の導入にあたって、売り手側は以下の事項に留意する必要があります。
適格請求書発行事業者の義務
適格請求書発行事業者には、適格請求書を交付することが困難な一定の場合を除き、原則取引の相手方の求めに応じて、適格請求書を交付する義務および交付した適格請求書の写しを保存する義務が課されます。
義務には、次の4つがあります。
1. 適格請求書を交付又は適格請求書に係る電磁的記録を提供する義務 | 適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方からの求めに応じて適格請求書を交付する義務が課されています。また、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供することもできます。 |
2. 適格返還請求書の交付又は適格返還請求書に係る電磁的記録を提供する義務 | 適格請求書発行事業者には、課税事業者に返品や値引き等の売上げに係る対価の返還等を行う場合、買手である課税事業者に対して適格返還請求書を交付する義務が課されています。また、適格返還請求書の交付に代えて、適格返還請求書に係る電磁的記録を提供することができます。 |
3. 修正した適格請求書等の交付又は修正した適格請求書等に係る電磁的記録を提供する義務 | 適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書等の記載事項に誤りがあったときは、買手である課税事業者に対して修正した適格請求書等を交付する(修正した適格請求書等に係る電磁的記録を提供する)義務があります。 |
上記1~3までの書類の写し又は電磁的記録を保存する義務 | 適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書等の写し及び提供した適格請求書等に係る電磁的記録の保存義務があります。この適格請求書等の写しや電磁的記録については、交付した日又は提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければなりません。 |
(引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022009-090.pdf)
買手の留意点(仕入税額控除の要件)
一方、インボイス制度の導入にあたって、買い手側は以下の事項に留意する必要があります。
保存が必要となる請求書等の範囲
保存が必要となる請求書等の範囲は、次のとおりです。
- 売手が交付する適格請求書又は適格簡易請求書
- 適格請求書の記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これに類する書類(課税仕入れの相手方において課税資産の譲渡等に該当するもので、相手方の確認を受けたものに限ります)
- 次の取引について、媒介又は取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類
・ 卸売市場において出荷者から委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の販売
・ 農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等が生産者から委託を受けて行う農林水産物の販売
(無条件委託方式かつ共同計算方式によるものに限ります) - 1から3の書類に係る電磁的記録
帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合
請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、一定の
事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
- 公共交通機関特例の対象として適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
- 適格簡易請求書の記載事項が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(1に該当するものを除きます)
- 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入
- 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の取得
- 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入
- 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入
- 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
- 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります)
- 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
まとめ
インボイス制度が導入されると、適格請求書発行事業者だけが適格請求書を発行できるようになります。
適格請求書を発行する適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、登録申請書を所轄税務署長に提出しなければなりません。
すでに課税事業者となっている方についても、自動的に登録されるわけではないので注意してください。
登録申請は、e-Taxを利用して行うことも可能です。
◆最新記事はKaikeiZine公式SNSで随時お知らせします。