会社から給与が支給されている多くの方は、基本は確定申告の必要はないですが、一方で、ある条件に当てはまると確定申告の必要が出てきます。この記事では、給与所得者で確定申告が必要、不必要、した方がいい場合についてそれぞれ解説します。

この記事の目次

なぜ会社員は確定申告をしなくても良いの?源泉徴収制度を解説

所得税は、所得者自身でその年の所得金額とこれに対する税額を計算し、これらを自主的に申告して納付する、いわゆる申告納税制度が採用されています。

これに加えて、特定の所得については、その所得の支払の際に支払者が所得税を徴収して納付する源泉徴収制度が採用されています。

会社員の方は、通常、会社側があらかじめ特定の所得について所得税を徴収しています。

源泉徴収制度は、

  1. 給与や利子、配当、税理士報酬といった所得を支払う者が
  2. その所得を支払う際に所定の方法で所得税額を計算して
  3. 支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付するものです。

つまり、源泉徴収が行われていれば、会社側によって所定の方法で計算されたうえで所得税額があらかじめ差し引かれているので、所得者自身で所得税について申告をせずともよくなっているのです。

会社員で確定申告をしなければならないケース

上で説明したように、会社員の方は源泉徴収が行われているので、確定申告を行う必要がありません。

しかし、一定の条件に当てはまる場合には、確定申告を行わなければならないことになっています。

以下では、会社員の方で確定申告をしなければならないケースについて解説していきます。

給与の年間収入金額が2,000万円を超える

給与の年間収入金額が2,000万円を超える場合には確定申告を行う必要があります。

給与の年間収入金額が2,000万円を超えている場合、会社側で年末調整が行われないので、自分で確定申告を行わなければなりません。

1カ所から給与を受け、給与と退職金以外の所得の合計額が20万円を超える

給与を1カ所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超えるている方については、確定申告を行う必要があります。

年末調整されなかった給与と退職金以外の合計額が20万円を超える人

給与を2カ所以上から受け、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える場合には、確定申告が必要です。

なお、給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く)を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の方は、確定申告を行う必要はありません。

同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人

同族会社の役員やその親族などに該当する方で、その同族会社からの給与所得のほかに、貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料、機械・器具の使用料などの支払いを受けた場合には、確定申告を行う必要があります。

災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人

給与について、災害減免法により所得税等の源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた方については、確定申告を行わなければなりません。

保険金などにより補てんされる金額を除き、災害によって受けた住宅や家財の損害金額がその時価の2分の1以上で、かつ災害にあった年の所得金額が1,000万円以下であるケースにおいて、その災害による損失額について雑損控除の適用を受けなければ、災害減免法によりその年の所得税が次のように軽減されるか免除されます。

所得金額の合計額 軽減または免除される所得税の額
500万円以下 所得税の額の全額
500万円を超え750万円以下 所得税の額の2分の1
750万円を超え1,000万円以下 所得税の額の4分の1

(引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1902.htm

源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人

従業員が給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していて、支払う給与額(社会保険料控除後の金額)が月額8万8,000円未満の場合には、会社側で源泉徴収すべき税金がないので、必然的に源泉徴収を行う必要がありません。

しかし源泉徴収・年末調整が行われていないので、確定申告を行わなければなりません。

退職所得に対する税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人

退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人については、確定申告を行う必要があります。