「医療費控除をするなら夫の方がいいってホント?」「医療費控除をしたらとにかくお金がもどってくる」。家庭を支える主婦の間では、こんな会話がされているようです。この医療費にまつわる話を今回、一気に解説します。

この記事の目次

主婦のギモン1:「確定申告すれば医療費すべてがもどってくる」はホントなの?

「医療費控除で申告したら払った分がもどってくる」

と言われます。

残念ながら、お金がもどってくるとは限りません。

もどるにしても「払った医療費全額」ではありません。

なぜそうなるのでしょうか。医療費控除のしくみを見てみましょう。

医療費控除のしくみは「所得からさしひく」

医療費控除の「控除」とは「さしひく」という意味です。

つまり、医療費控除は「払った医療費がさしひかれる」ということになります。

医療費控除は1月1日から12月31日までの所得の合計からさしひかれます。

確定申告書で見ると、第一表の下の方のところです。

【引用元】「確定申告書(令和4年分以降)」(国税庁)を一部加工して作成

さしひく医療費は「払った金額の一部」

ただし、払った医療費がすべて所得からさしひかれるわけではありません。

次の式で計算した金額が所得からさしひかれます。

つまり、どうがんばっても全額ではなく一部なのです。

なお「総所得金額等」は、通常、申告書の下記の部分だと考えていいでしょう。

【引用元】「確定申告書(令和4年分以降)」(国税庁)を一部加工して作成

ただし、退職金をもらったり、土地・建物の売却があったりしたときは、あらためて計算しなくてはなりません。

【参考】総所得金額等と合計所得金額…どう違う?確定申告で使う場面も解説

還付は「すでに納めた税金がある」ことが前提

1年間に払った医療費が10万円を超えたからといって、確定申告でお金がもどってくるとは限りません。

なぜなら、確定申告はお金をもらうために行うものではないからです。

「税金のかかる所得の金額と税金を正しく計算して申告する」のが確定申告です。

そして「お金がもどってくる」つまり還付されるのには2つ条件があります。

1つ目は「納めすぎた税金がある」ことです。

「納めすぎ税金がある」というのは、次のような所得税の制度で払い済みの税金がある状態をいいます。

  • 源泉徴収制度…サラリーマンなどの給料や年金生活者の年金、株の特定口座から所得税を天引き
  • 予定納税制度…前回の納税額が多かった個人事業主などが年2回、所得税を一部先払いする

予定納税をしていない個人事業主だと、医療費控除をしてもお金はもどってきません。

納める税金が少し安くなるくらいです。

給与年収103万円以下のパートやバイトも同じです。

源泉徴収(天引き)されている所得税がそもそもありません。

そのため、医療費控除で確定申告をしても、もどってくるお金は0円なのです。

「すでに納めた税金>本来かかる税金」で還付になる

「確定申告でお金がもどってくる」にはもう1つ、条件があります。

「すでに納めた税金が正しく計算した税金よりも多いこと」が条件です。

医療費控除は年末調整で所得からさしひきません。

さしひけるのは確定申告だけです。

そのため、年末調整を受けたサラリーマンが医療費控除で確定申告をすると、たいていは「還付」つまり払いすぎた税金がもどってくるわけです。

ただ「副業や不動産投資でほかに所得がある」なら別です。

所得額が年末調整のときよりも多ければ、追加で納税することになるかもしれません。

医療費控除があっても、です。