物価上昇が止まりません。これまで企業努力によって抑え込まれてきたコスト上昇が限界を迎えた結果ですが、その分競争力を落とすリスクもはらんでいます。
営業利益を増やすべく、地代家賃を抑えたい。
会計本来の役割ですが、改めて見ると「ビジネス→会計」なる一方通行です。
会計を見据えながらビジネスを考えるという視点を加え、目線を2車線にする。
両者の横断を可能にすれば、間違いなくいずれの精度も向上します。
ビジネスから会計、会計からビジネス第4回は、「コストの外在化」です。
コストの両義性と多面性
コスト=販管費のイメージがありますが、当然のことながらそれだけではありません。
まず、コストには2つの意味が混合しています。
1つは、売上につながるもの。
そしてもう1つが単なる支出という意味合いです。
日本語の会計用語ではあまりピンときにくいですが、英文会計にすると明確な違いが確認できます。
売上につながるコストをCostsといい、その反対をExpensesと表現されており(いずれも複数形。対義語に位置する利益も同様です。ProfitとRevenueは別もので、Revenue=収入、Profit=利益です。売上(Sales)ではありません。)、それぞれ損益計算書にプロットすると、1つめが「売上原価」、2つめが「販管費」に相当します。
こうしたことは貸借上でも同様です。
B/S上には、“直接的”なコストと“間接的”なコストの2つが内在しています。
B/S右側上、流動資産の部が直接的、それ以外の資産における減価償却や資本における調達コストといったものが間接的です(その資金の発生には漏れなくそのコストが前後で付与されるという意味で間接としています)。
コストは試算表上のあらゆる箇所にその顔を出す。
当然、単に会計的な損益上の縮減だけでは恒常的な安定性には繋がりません。
さらに踏み込んで、ビジネス全体の視点でコントロールすることが重要です。
その機能的な戦略の1つ。それが「コストの外在化」です。
コストの外在化
コストの外在化という言葉から連想されるものとして、最も市民権を得ているのが「アウトソーシング」でしょう。
文字通り外部にリソースを出す、という意味です。
一般的にアウトソーシングの対象には資産や人などの「財」、そして経理処理などのオペレーションフローといった「機能」の2つがあります。
前者は単なる企業資産の一部分、後者は前者を包含しつつアウトソースされます(例えば、経理作業のアウトソースによって、経理担当者の削減も実現する)。
分類は、範囲だけではありません。
もう1つ、「タイミング」も存在します。
つまり、旧来から保有していた財や機能をアウトソースするのか、もしくはそもそも保有しないビジネスモデルを当初から組み上げるのか、です。
1つめは、多くの人がイメージするアウトソーシングそのものです。
説明の多くを必要としないでしょう。
2つめの保有しないモデルとして最もポピュラーなものが、FC、フランチャイズ形式です。
本部(フランチャイザー)は、事業ノウハウ、それを支えるシステムと実証用の直営店舗など必要最低限の資産を保有し、それら以外、例えばコンビニであれば土地を含む店舗、POSレジなどの店舗システム、運営スタッフ、そして商品群などは加盟店(フランチャイジー)が保有するのが一般的です。
以上の2つは、基本形とも言えるスタイルですが、コストの外在化は旧来からあるこうしたシンプルなアウトソースだけに留まりません。
あらゆるコストを対象にしたさまざまな手法がまだまだあります。
続けて事例を交えながらご紹介していきましょう。