固定資産税の仕訳方法

固定資産税を経費として処理できるということは、適切に記帳を行なう必要があるということです。

固定資産税を経費として記帳する方法は2つあります。

固定資産税など、税金が賦課される日にちが決まっている賦課課税方式を採用している税金のうち、税金を分割して納めることができるものに関しては、各納期の税額をそれぞれの納期の開始の日の属する年分もしくは、実際に納付した日の属する年分の必要経費にできます。

たとえば、固定資産税の第4期分は、原則として賦課決定を受けた年分の必要経費とするのが原則です。

しかしながら、その翌年2月が納期であるため、納期の開始の日である翌年分の必要経費にもできますし、実際に納付したその後の年分の必要経費にすることも可能です。

毎年継続して経費処理することが原則となりますが、どちらで経費処理を行なうかによって課税所得が変わるので、納めるべき税額も変わってくることになります。

以下では、この点も含めて解説していきます。

固定資産税の支払い日に経費計上する方法

固定資産税は一括で支払うこともできますが、分割で支払うことも可能です。

上記で説明したように、分割で支払う場合には第1期: 6月、第2期: 9月、第3期: 12月、第4期: 翌年2月が支払うタイミングとなります。

ここで、4月1日〜3月31日までを会計期間とする企業であれば、固定資産税の額はすべてこの会計期間の経費とすることができます。

一方、1月1日〜12月31日までを会計期間とする企業であれば、固定資産税の額は、第1期、第2期、第3期分のみを経費として計上することになり、第4期分の固定資産税は、翌会計期間の経費とすることになります。

固定資産税の支払い日に計上する方法は、経費を支払ったときに仕訳を行なうので、複雑な仕訳処理が少なく、租税公課勘定と現金勘定のみで処理できるというメリットがあります。

固定資産税の金額確定日に経費計上する方法

他方で、固定資産税の金額確定日に全額を経費計上する場合、4月〜6月頃に送付されてくることの多い納税通知書に基づいて、全額必要経費を未払金勘定を使って計上することになります。

未払金勘定、租税公課勘定、現金勘定という3つの勘定科目を利用するため、記帳する手間が増える可能性がある点には注意が必要です。

固定資産税の金額確定日に経費計上する方法であっても、1月1日〜12月31日までを会計期間とする企業は、第1期、第2期、第3期分を支払ったタイミングで、未払金勘定を現金勘定に振り替える手続きが必要です。

また、第4期分については、前払金勘定を使って仕訳することになります。

まとめると、以下のような仕訳が必要です。

  • <賦課決定日>

(借) 租税公課 100,000 (貸)未払金 100,000

  • <第1期: 固定資産税を実際に支払った日>

(借)未払金 100,000 (貸)現金 100,000

  • <第2期: 固定資産税を実際に支払った日>

(借)未払金 100,000 (貸)現金 100,000

  • <第3期: 固定資産税を実際に支払った日>

(借)未払金 100,000 (貸)現金 100,000

  • <決算日>

  (借) 前払費用 100,000  (貸)租税公課 100,000

土地や家屋とは違う?償却資産の固定資産税

固定資産のうち、土地や家屋については個人で利用するのが普通です。

一方で、固定資産のなかでも償却資産は土地や家屋以外の事業で活用されます。

そのため、償却資産は計算方法などが他とは異なります。

以下では、固定資産税における償却資産の位置づけと具体例を説明するとともに、具体的な手続きについて解説していきます。

固定資産税における償却資産の位置づけと具体例

償却資産とは、基本的に事業で活用される資産のことを言います。

具体的には、個人や会社において、工場や商店を営んでいる場合の機械、事務用品が償却資産に該当します。

また、不動産賃貸業(駐車場やアパート等の貸付業)を営んでいる場合は、アスファルト舗装・外構工事が該当します。

他にも、飲食業を営んでいる場合の厨房用品・レジスター・看板などは償却資産に該当します。

償却資産の申告から課税までの基本的な流れ

償却資産の申告から課税までのおおよその流れは、以下のようになります。

時期 具体的事務 備考
12月上旬 申告書の配布
1月 申告書の受理 ・申告書の内容確認
2月 評価計算(電算処理)
3月 評価調書の作成・報告 ・価格調書の提出
・価格の決定
4月 価格等の課税台帳への登録 ・課税台帳に登録した旨の公示
・課税台帳の閲覧
・審査の申出
・審査請求
4〜6月 納税通知書の交付
5月~11月 実地調査の実施
11月 申告書の配布準備

具体的な償却資産の申告から課税までに行なうべき内容は以下のとおりです。

1. 申告書の提出

年1月1日現在において保有している償却資産については、その内容(取得年月、取得価額、耐用年数など)を1月31日までに償却資産の所在する自治体に申告しなければなりません(地方税法第383条)。

  • 申告する際に提出が必要な書類
申告方式 申告が必要な方 申告する資産 提出書類・様式 備考
一般方式
令和4年1月2日
以降に新規に事業を開始された方
令和5年1月1日現在において所有されている全ての償却資産 ○償却資産申告書[緑色]
○種類別明細書
[緑色]
(増加資産・全資産用)
○種類別明細書(増加資産・全資産用)に全資産を記入してください。
○申告する資産がない場合、申告書の「18. 備考」欄の「該当資産なし」の□にチェックを入れてください。また、今後も資産が生じる見込みがない場合は、「申告書送付停止希望」と記入してください。ただし、資産の所有状況を確認するため、概ね3年に一度は申告書が送付されてきます。
上記以外の方 令和4年1月2日から令和5年1月1日までの間に増加又は減少した償却資産 ○償却資産申告書[緑色]
○種類別明細書
[緑色](増加資産・全資産用)
○種類別明細書
[赤色](減少資産用)
○資産の増減がない場合、申告書の「18. 備考」の「資産増減なし」の□にチェックを入れてください。なお、種類別明細書の提出は不要です。
○賦課期日現在資産がなく、今後も生じる予定がない場合は、「申告書送付停止希望」と記入してください。
ただし、資産の所有状況を確認するため、概ね3年に一度は申告書が送付されます。
企業電算処理方式 企業の電算処理により申告される方 令和5年1月1日現在において所有されている全ての償却資産 ○償却資産申告書
○種類別明細書
(増加資産・
全資産用)
○種類別明細書
(減少資産用)
○様式の種類別明細書にある記載事項の全てを記載してください。
○「全資産」と共に「増加資産」及び「減少資産」の明細を添付してください。
○全ての資産について「評価額」を算定してください。
○種類毎に区分し、それぞれの合計額を記載してください。
○課税標準の特例の適用がある場合は、その特例率、課税標準額を記載してください。

2. 価格等の決定と課税台帳への登録

償却資産の価格などについては、申告および調査に基づいて決定されます。

決定された価格等については、償却資産課税台帳に登録されます。

3. 課税台帳に登録した旨の公示

価格などについて償却資産課税台帳に登録した旨が公示されます。

4. 課税台帳の閲覧

償却資産課税台帳に登録された価格などについては、償却資産の所有者、納税管理人、代理人など、固定資産税の課税に直接関係する人が閲覧できるようになっています。

閲覧は、価格などについて償却資産課税台帳に登録した旨が公示された日から可能です。

5. 審査の申出

もし、償却資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合、償却資産課税台帳に価格などが登録された旨公示された日から、納税通知書を受け取った日から数えて3カ月以内であれば、文書により審査の申出を行えます。

さらに、審査の決定に不服がある場合、決定の取消しの訴えを提起することも可能です。

6. 税額の算出および納税通知書の交付

以下の計算式に基づいて税額が算出され、4〜6月頃に納税通知書が交付されることが多いです。

・ 税額 = 課税標準額 × 税率(原則1.4%)

7. 納期

償却資産についても固定資産なので4回の納期があり、納税通知書に納税方法は記載されています。

償却資産はどこに申告する?

償却資産の申告を行う場合、償却資産がある自治体に対して申告を行なうことになります。

償却資産の固定資産税算出方法

償却資産の固定資産税は次のように計算されます。

まず、償却資産の評価を行います。

評価においては、取得価額(償却資産を購入した際の価格)を基礎としながら、その資産の法定耐用年数(利用期間)と取得後の経過年数に応じた減価を考慮して価額を決定します。

個々の資産ごとに 評価額 を計算したら、その合計を課税標準額として課税標準額に税率(1.4%)を乗じて固定資産税額を算定します。

なお、税率は地方自治体ごとに異なる場合があるので注意してください。

まとめ

固定資産税は、所得税のように申告納税方式ではなく賦課課税方式を採用しているので、納税者自ら固定資産税額を申告する必要はありません。

固定資産税は一般に、4〜6月頃送付されてくることの多い決定通知書に納税額が記載されているので、その税額を納めれば問題ありません。

しかし、固定資産のうち償却資産だけは特定の事項について申告を行う必要があるので注意してください。


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