今年も確定申告の時期が終わり、一安心という方も多いのではないだろうか。毎年、確定申告の時期になると、税務署には長蛇の列。とくにマイナンバー制度導入に伴い、例年以上に、提出に時間を要した方も多いはずだ。そんな確定申告、開業医のみなさまは、経費とそうでないものを、しっかり管理できているだろうか。意外にも経費として認められていないものを申告している方も多いため、来年の確定申告に備えて、いま一度チェックしておいてほしい。
■出身大学の同窓会への参加費は交際費に該当するのか?
医師に限らず、どの業種でも交際費は存在するが、医師の場合、とくにその金額が大きくなる傾向にある。とはいえ、税務調査では交際費の中に「個人的な飲食代」が含まれていないかどうかを厳しくチェックされることをご存知だろうか。
医師の交際費でよくある間違いとして「出身大学の同窓会の参加費」が挙げられる。これは一見すると、情報交換や広報の場として、事業遂行上の経費性があるように思われるが、原則として経費に算入することができない。
理由は、「同窓会は同窓生として、私的な立場で入会しているものと認めるのが相当であり、会費の主たる部分が事業の遂行上必要であるとも言えず、事業遂行上直接必要な部分を明らかにすることもできない」から。
つまり、同窓会は医師の事業活動のために存在しているわけではなく、参加者も「医師」としての立場よりも「大学の卒業生」としての立場で参加していると考えられるというわけだ。この件に関しては、平成13年3月30日の裁決においても必要経費に算入できないとの判断がなされている。
■医療関係の集まり、懇親会は交際費に該当するのか?
では、どういったものが交際費として認められるのだろうか。当然、「病院やクリニックの経営に関連したもの」であることが必須となり、具体的にあげると、製薬会社、医療機器メーカー、会計事務所、経営コンサルタントとの食事代などが該当する。
また、勤務医の勧誘費用も交際費として経費に算入できる可能性が高い。領収証に相手先や人数、目的などを明記して、事業上の経費であることを明確にしておこう。
このほか、急な来客があった場合に、もてなすお茶がなく、近くの自動販売機で購入した場合も、現金出納帳やノートに記しておけば、領収証がなくとも経費として認められる場合がある。いずれも、地道なメモ書きは将来の自身を守ってくれるため、癖をつけておこう。
■「隠ぺい又は仮装」だと税金が大きく加算される
一般的に、病院やクリニックは所得が多く、税務署としても重点的に税務調査を行わなければならないと考えている傾向にある。もし仮に、過去に提出した申告書の内容について、税務調査で誤りを指摘された場合、その後はどうなるのだろうか?
まず、指摘された事項(売上が漏れている、経費ではないものが経費として入っているなど)に基づき、税金の対象となる課税所得が増える場合は、所得税が増えることとなる。
さらに、増えた所得税額に対し、加算税というものがペナルティーとして課されるのであるが、指摘された事項が「隠ぺい又は仮装」に該当するか否かで加算税の額が大きく異なってくる。
ちなみに、「隠ぺい又は仮装」の定義は下記のような場合である。
1.いわゆる二重帳簿を作成していること
2.1以外の場合で、次の事実があること
・帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書その他取引に関する書類(以下「帳簿書類」という。)を、破棄又は隠匿していること
・帳簿書類の改ざん、偽造、変造若しくは虚偽記載、相手方との通謀による虚偽若しくは架空の契約書、請求書、領収書その他取引に関する書類の作成又は帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装を行っていること
・取引先に虚偽の帳簿書類を作成させる等していること
3.事業の経営や取引等を、本人以外の名義又は架空名義で行っていること(脱税を目的としていないことが明らかな場合や、正当な事由がある場合を除く)
指摘された事項が隠ぺい又は仮装によるものと認定された場合には、増えた所得税額に対し35%(当初、期限内に申告書を提出していなかった場合などには40%)の重加算税が課税される。
出身大学への同窓会の参加費を誤って経費に入れてしまっただけで、直ちに重加算税が課されるということはないが、年が明けてから前年分の帳面を付け始めるというようなことをしているとミスが生じる可能性が高いので注意しておこう。
真面目に帳簿を付けていれば、こういった事態が起きる心配はないと思うが、万が一のことを考えると、会計帳簿は定期的に付け、何度もチェックをするほうが賢明。これを機に、経費についていま一度確認してみてはいかがだろうか?