この先も必要とされる会計人を育てるために

■書籍では、「数字の声を聞く」具体的な方法も網羅されていますよね。そのような数字ベースのコンサルを展開する狙いはあるのでしょうか?

萩口:これからの時代における、会計事務所や会計人の役割という観点からですね。最初に申し上げたように、弊社は「マネーフォワード クラウド会計」を50社に導入した関東で最初の事務所なのですが、つまりいまは、従来人間がやっていた作業がテクノロジを使ってどんどん効率化されていっている時代ですよね。そんな時代に、私たち会計事務所はどんな役割を提供できるのでしょうか?

もちろん私たちも記帳代行をし、税金を計算する業務を請け負っていますが、そこが効率化されてきたいま、その仕事を安売りしてしまっている会計事務所が多いように感じています。しかし私たちはその道は選ばずに、その先にある付加価値を世の中に提供したいと考えています。

会計と言うと、どうしても過去の取引の集計が中心にはなるのですが、その上で私は、先ほどの「数字のチカラで未来を変える」というのをモットーにやっています。数字、より具体的に言うなら事業計画を使って、クライアントの未来を変えていくことに挑戦し続けているのです。

ただ、このコンサルティングを始めてもう7年くらい試行錯誤を続けていますが、「数字のチカラで未来を変える」って、言うほど簡単じゃありません(笑)。どうやったら本当の意味でお客様の未来を変えられるかを常に問い続け、改善し続けてきて、現時点で効果が出る仕事ができていると感じられるようになっています。そうしたこれまでで得た経験や知見を、今回書籍化しているのです。

もう1つは、働く人のキャリアという観点です。テクノロジに取って代わられていく仕事だけを続けてきた人たちのキャリアは、テクノロジの進化によって今後どうなっていくのでしょうか?会計事務所として生き残ることももちろん重要ですが、会計に関わる一人ひとりが、これからの時代も必要とされる会計人としてのスキルを身に着けることも重要です。また、会計事務所を経営する立場としては、一人ひとりの会計人がこれからの時代も必要とされるスキルが身につくような仕事を創出していく責任があるとも、考えています。

■そうした会計人を育成するために、どのような社内教育をされていますか?人材の採用や定着の成果も出ていると聞いているので、秘訣があればぜひ教えてください。

萩口:弊社の最上位の価値観、企業理念が、「従業員の物心をゆたかにする」です。では、本当に従業員がゆたかになれるためにはどうしたらいいのだろうか?そこから全てのことを考え、意思決定をしています。

弊社の採用は未経験者がメインです。また、うちの事務所が求める会計人の人物像は、通常の会計事務所よりも幅が広いようです。うちで仕事をするためには、税務だけでなく財務やコンサルのスキルを身に着けていかないといけないからで、他の事務所で「会計事務所とはこういうもの」「ここまでが私たちの仕事」という価値観で長年働いてきたような方ですと、働き始めてから適応できなくなることも少なくありません。経験や資格よりも、正直さや素直さや成長志向、本当にお客様の役に立てるようになりたくて、それに向けた努力ができる方というのもポイント。それがうちの採用基準です。

ちなみに経験者の採用に関しては、時々REXさんの紹介のお世話になっています(笑)。採用したいと思った方はほぼ全員が入社してくれますが、これはうちの「1. ビジネスモデルや、成長ビジョンにより事務所自体が今後継続し成長するということ」、そして「2. 一人ひとりの会計人がなぜゆたかになれるのか」という2つを明確にお話できているからなのではと考えています。

事務所の経営がうまくいくことももちろん大切ですが、事務所の成功のためにスタッフ一人ひとりの成長やゆたかさが犠牲になるのは違うと思います。うちには、パートさんも含めた一人ひとりのキャリアを大切にしながら、それと事務所の成長とを整合させるビジョンとビジネスモデルがあります。私は、見せかけではなく本気でこの企業理念を実現すべく、考え、行動し続けているのです。

その結果、繁忙期でも平均20時間未満の残業時間が実現できています。決算賞与も過去7年で6回ほど支給できていますし、パートで入社した社員が、家庭の状況に合わせて働きながら税理士資格を取得し、現在はフルタイムのマネージャーとして活躍しています。テレワークやフレックスなどの働き方も含め、業界でもなかなかないくらいワークライフバランスの取れた、働きやすい会計事務所ではないかと自負しています。

また、年間で1人当たり最大30万円までの勉強代を会社負担していて、税理士をはじめ、社労士、司法書士、中小企業診断士、それ以外にも様々な勉強をそれぞれのスタッフがしています。去年だけでも、中小企業診断士、ファンドレイザー、採用定着士など、税理士以外にも資格を取得し、それが事務所の収益性を高め、スタッフ自身の評価にもつながっていくという好循環を生み出せているのです。私が自分だけの脳みそで勉強するよりも、現在のスタッフ14人の14個の脳みそで勉強をした方が、成果は当然大きくなりますからね。

ここ3年の退職率も10%未満で、働きやすく成長できる環境だとスタッフみんなに感じてもらえているのではと感じつつ、引き続き従業員がもっともっとゆたかになれる事務所を作っていきたいと思っています。

■ところで今回初の著書ということで、1冊書き上げてみていかがでしたか?

萩口:大変でしたけど、これまでは会えなかった人に会うことができたり、大手メディアから取材の依頼が入ったり、尊敬する師匠から一緒に仕事をしようと声がかかったりと、いままでは想像もしていなかったことが起こって、面白いですね。今後も、書籍が自分の想像していないさらなる世界に連れて行ってくれる期待を抱いています。いままでは「対お客様」の世界で貢献してきましたが、「対世の中」という言わば公の存在として、世の中により広く、深く貢献していく世界が少しずつ見えてきたところです。

■本日は、会社の未来を明るくするお話しに加え、会計事務所の未来を明るくするお話しもうかがえました。ありがとうございました。

萩口:こちらこそありがとうございました。これからも世の中に新しい価値を提供できるよう、そして共に働くメンバーがゆたかになれるよう、精進していきたいと思います。

 

『儲かる会社の「しゃべる」数字』書影

儲かる会社の「しゃべる」数字
萩口義治
(日本経済新聞出版)

萩口義治

はぎぐち公認会計士・税理士事務所長。株式会社HG&カンパニー代表取締役。2003年、公認会計士二次試験に合格、新日本監査法人に入社。主に、日系・外資の製造業・IT業・ホテル業・アパレル業など幅広い業種の会計監査・上場準備・IFRS案件に従事。
2009年、独立系の会計/税務コンサル会社に入社。中小企業の税務から、決算早期化、内部統制構築、M&Aコンサル(デューデリジェンス、株価算定)、海外上場案件などに従事。
2012年、株式会社HG&カンパニー設立、代表取締役に就任。税理士登録し、はぎぐち公認会計士・税理士事務所を開業。

 

株式会社HG&カンパニー

はぎぐち公認会計士・税理士事務所(※認定経営革新等支援機関)

●設立
2012年12月

●代表者
萩口義治(公認会計士・税理士)

●所在地
〒103-0023
東京都中央区日本橋本町4-15-11 岩月日本橋ビル8階

●会社HP
https://hgand.co.jp/

KaikeiZineは会計プロフェッショナルの活躍を応援するキャリアマガジンです。インタビューや取材を通じての情報発信をご希望の方はお問合せください。
取材・掲載は無料です。
お問合せはこちら