個人事業主の方が知っておくべき源泉徴収の知識を、解説します。個人事業主が従業員を雇用している場合は、原則として源泉徴収を行った上で、給与・賞与・退職金などの支払いを行わなければなりません。
この記事の目次
個人事業主が源泉徴収をしないといけないケースとは?
個人事業主の方のうち、従業員を雇用している個人事業主の方については、原則として源泉徴収が必要です。
一方、従業員を雇用していない個人事業主の方は、源泉徴収を行う必要はありません。
ここでは、個人事業主と源泉徴収制度の関係性について解説した上で、どんな場合に源泉徴収をしなければならないかを詳しく解説します。
個人事業主と源泉徴収の関係
日本においては、経営者(個人事業主)が、従業員に支払う給与や賞与などの所得から源泉徴収を行うことが、法律で義務付けられています。
源泉徴収は、給与支払者が受け取った所得に対して、所得税や住民税、社会保険料などの税金を事前に差し引いて納付する制度であり、従業員の負担を軽減することを目的としています。
源泉徴収制度の意義
源泉徴収制度には、以下のような意義があります。
- 確実な税収確保
源泉徴収制度は、給与や報酬などの支払者が受け取った所得に対して、事前に税金を差し引いて納付するため、税収の確保が確実になります。
また個人が税金を納付する際にも、支払い漏れや滞納などのリスクがありますが、源泉徴収制度によって、事前に税金を差し引いて納付することで、やはり税収の確保がより確実になるのです。 - 所得税の公平な課税
源泉徴収は、所得税を公平に課税することができる制度です。
源泉徴収制度により、個人が受け取った所得に応じた税額を納付することができるのです。 - 納税の簡素化
源泉徴収制度によって、納税の手続きが簡素化されます。
納税者は、源泉徴収された税金を確定申告することで、その年の所得税や住民税の納税を完了することができます。
これにより個人の納税手続きが簡素化され、税務手続きの負担が軽減されるのです。 - 社会保障制度の維持
源泉徴収制度は、社会保障制度の維持にも貢献しています。納付された源泉徴収税は、国民年金や健康保険、介護保険などの社会保障制度の資金源として活用されます。
したがって、源泉徴収制度は社会保障制度の維持につながる重要な制度でもあるのです。
源泉徴収しなければならない個人事業主とは?
非正規社員で雇用している個人事業主は、原則として源泉徴収をしなければなりません。
言い換えると、個人事業主は、雇用している従業員に対して支払う給与や報酬に関しては、源泉徴収の義務があります。
具体的には、個人事業主は雇用した従業員に対して源泉徴収票を発行し、年度末に確定申告を行うことにより、源泉徴収税の納付を行う必要があります。
例外的に義務が発生しないケースはある?
すでに説明したように、会社や個人が人を雇用して給与の支払いを行ったり、税理士・弁護士・司法書士などに対して報酬を支払った場合、支払いの都度、支払金額に応じて所得税と復興特別所得税を差し引かなければなりません(つまり、源泉徴収をしなければなりません)。
しかし、2人以下の家事使用人だけに常時給与を支払っている個人については、支払う給与や退職金について、源泉徴収をする必要はありません。
また従業員がいない個人事業主が支払う弁護士報酬などの報酬・料金は、源泉徴収の必要がありませんので注意してください。
給与支払事務所等の開設届出書って?
給与を支払う事業主が事業所または事務所を開設する際に、都道府県労働局に提出する書類のことを、「給与支払事務所等の開設届出書」といいます。
この書類には、以下の内容が含まれます。
- 事業主の名称や住所などの基本情報
- 開設する事業所または事務所の所在地や名称などの情報
- 従業員の人数などの情報
これらの情報を都道府県労働局に提出することで、給与に関する法令の遵守や社会保険料の納付などが行われるようになります。
また、事業主が事業所または事務所を変更する場合にも、同様の手続きが必要となります。
なお、給与支払事務所等の開設届出書の提出は、事業所または事務所を開設する前に行う必要があります。
源泉徴収を行うタイミング
源泉徴収は、支払いの時点で行います。
具体的には、給与支払や報酬支払いなどを行う際に、支払額から源泉徴収税を差し引いて支払います。
また源泉徴収税は、毎月の支払いごとに差し引いて納付する場合や、年度末にまとめて差し引いて納付する場合があります。
ただし源泉徴収税の納付には期限があり、原則として、支払いを行った翌月10日までの納付が必要です。
なお、源泉徴収票を年度末に発行する必要もあります。