個人事業主は自身で所得税の確定申告を行う必要があります。所得税の計算方法を知っておけば、流れをイメージがしやすくなり安心です。今回は所得税の計算方法や、所得税計算について押さえたいポイントを解説します。
この記事の目次
個人事業主の所得税、計算の流れ
所得税を計算する流れは、以下4つのステップに分けられます。
- 収入から必要経費を差し引く
- 所得控除を差し引く
- 課税所得金額に税率を乗じて控除額を差し引く
- 税額控除や納付済み税額を差し引く
この章では、具体例として数字を用いながら、所得税の計算方法について詳しく解説します。
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収入から必要経費を差し引く
まずは収入から必要経費を差し引きます。
収入から必要経費を引いた額が所得、すなわち所得税計算の基礎となる金額です。
所得は性質によって以下の10種類に分けられ、それぞれ計算方法や必要経費の範囲が異なります。
- 事業所得
- 不動産所得
- 利子所得
- 配当所得
- 給与所得
- 雑所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 山林所得
- 退職所得
(出典元:所得の種類と課税方法|国税庁)
個人事業主が事業によって得る所得は、原則として事業所得です。
そのため今回は事業所得の計算例を紹介します。
事業による1年間の収入が600万円、必要経費が100万円の場合、事業所得の金額は以下のように計算します。
600万円-100万円=500万円
今回の例において、所得額は500万円です。
所得控除を差し引く
所得税は収入から必要経費を引いた所得にかかるわけではありません。
所得から所得控除を差し引く必要があります。
所得控除とは、各納税者の個人的事情を加味した上で税額を計算するために用意された制度です。
所得控除として以下の15種類が存在します。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
所得控除の要件に該当する場合、所得額から所得控除額を差し引くことが可能です。
(所得控除の要件について詳しい説明は、この記事では割愛します)
今回は、個人事業主の多くが要件を満たす控除制度である、基礎控除・社会保険料控除の2つに該当する場合を例に解説します。
今回の例で使用する金額は以下の通りです。
- 基礎控除:48万円 ※基礎控除の額は納税者の合計所得金額に応じて定められています
- 社会保険料控除:60万円
前項で計算した所得額から控除額を差し引くだけであるため、計算式は以下のようになります。
500万円 -(48万円 + 60万円)= 392万円
所得から所得控除を差し引いた金額が、税率を乗じる対象となる課税所得金額です。
今回の例において、課税所得金額は392万円となります。
課税所得金額に税率を乗じて控除額を差し引く
所得税の税率は、課税所得金額に応じて定められています。
課税所得金額が一定以上である場合は、税率を乗じた後に控除額を差し引く必要があります。
課税所得金額ごとの税率および控除額は以下の通りです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
(出典元:No.2260 所得税の税率|国税庁)
今回の例では、課税所得金額は392万円です。
すなわち、適用される税率は20%、控除額は427,500円となります。
したがって、計算式は以下の通りです。
3,920,000円 × 20% - 427,500円 = 356,500円
つまり、所得税額は356,500円となります。
税額控除や納付済み税額を差し引く
最後に、所得税額から税額控除や納付済み税額を差し引き、期日までに納付するべき所得税額を確定します。
税額控除とは一定の要件を満たす場合、計算によって算出した金額を所得税額から直接控除できる制度です。
税額控除にはさまざまな種類がありますが、個人事業主が該当する可能性が高い制度として、以下の例が挙げられます。
- 配当控除
- 外国税額控除
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除:一般的に住宅ローン控除と呼ばれます
納付済み税額は文字通り、すでに納付が完了している税額です。
取引先による源泉徴収を受けている場合や、予定納税を行なっている場合、納付済み税額が存在します。
今回は取引先による源泉徴収額の合計が10万円の場合を例に解説します。
この場合、前項で算出した所得税額から納付済み税額10万円の控除が必要です。
計算式は以下のようになります。
356,500円 - 100,000円 = 256,500円
以上の計算から、所得税の納付期日までに支払う必要のある税額は256,500円となります。