5月下旬から6月にかけて、(個人)住民税の決定通知書が届きます。通知書が届くたび「住民税、高いなぁ」と感じる人は多いのではないでしょうか。今回は、住民税のしくみを確認し、なぜ高いのかについて考えてみます。
【登場人物】

よっちゃん(以下「よ」):まゆこの夫。行政書士。仕事はできるが税金はくわしくない。特技は料理と釣り。夢は釣り三昧の日々。

まゆこ(以下「ま」):税理士・税務ライター。「こむずかしい税金をいかに分かりやすく表現するか」ばかり考えている。趣味は、よっちゃんのごはんを食べること。
6月は住民税決定通知書が届く
よ「住民税の決定通知書が来たよ」
ま「私も」
よ「1年間で〇万円かぁ…去年より高いわ」
ま「私も(涙)」
よ「納付の期限、うっかりしそう…。サラリーマン時代はラクだったな。毎月の給料から天引きだったし」
ま「特別徴収ね。会社が本人の代わりに納めてくれるもん、ラクだよ。一方、自営業は普通徴収。自分で納めないといけないから大変だね」
よ「なんか住民税、重いんだよね」
ま「住民税も所得税と同じ所得をベースに計算されるんだよ。でも、納税の時期が所得税より3カ月以上遅い。だから痛税感があるのかも」
よ「納税時期の問題を別にしても、住民税は高く感じるよ。たかが10%のはずなのに」

住民税のナゾ1 税率10%なのに高く感じる
ま「よっちゃん、住民税にはどんなものがあるか知ってる?」
よ「うん。住んでいるだけでかかる『均等割』と稼ぎ(所得)に応じてかかる『所得割』でしょ」
ま「そう。さっきよっちゃんが言っていた『10%』というのは、所得割の税率のこと。実は住民税って他にもあるんだよ」
よ「ホント?」
ま「『配当割』『利子割』『株式等譲渡所得割』。まとめるとこんな感じ」

ま「あと、住民税の所得割の計算は、所得税とほぼ同じなの」

【引用元】個人住民税(東京都主税局)
よ「でも、所得割の税率は10%だろ。なのになんで高く感じるんだろう」
ま「所得控除のせいかも」
よ「所得控除?」
ま「所得からさしひく金額のこと。配偶者控除とか扶養控除とかあるでしょ」
よ「ああ」
ま「所得割の所得控除って、所得税より少ないの。納税者本人の事情に合わせた所得控除を『人的控除』というんだけど、この控除額、こんなに違うのよ」
| 人的控除 | 年齢などの条件 (所得金額を除く) |
所得税 | 住民税 | 差額 |
| 基礎控除 | 最大48万円 | 最大43万円 | 最大5万円 | |
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配偶者控除
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一般(70歳未満) | 最大38万円 | 最大33万円 | 最大5万円 |
| 老人(70歳以上) | 最大48万円 | 最大38万円 | 最大10万円 | |
| 配偶者特別控除 | 最大38万円 | 最大33万円 | 最大5万円 | |
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扶養控除
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一般(16歳以上19歳未満、23歳以上) | 38万円 | 33万円 | 5万円 |
| 特定(19歳以上23歳未満) | 63万円 | 45万円 | 18万円 | |
| 老人(70歳以上、非同居) | 48万円 | 38万円 | 10万円 | |
| 老人(70歳以上、同居) | 58万円 | 45万円 | 13万円 | |
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障害者控除
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普通障害 | 27万円 | 26万円 | 1万円 |
| 特別障害 | 40万円 | 30万円 | 10万円 | |
| 同居特別障害 | 75万円 | 53万円 | 22万円 | |
| ひとり親控除 | 35万円 | 30万円 | 5万円 | |
| 寡婦控除 | 27万円 | 26万円 | 1万円 | |
| 勤労学生控除 | 27万円 | 26万円 | 1万円 |
よ「19歳の子の扶養控除額の差が18万円も!」
ま「所得税と住民税の人的控除の差を埋めるべく、住民税の所得割には『調整控除』が設けられているの。合計所得金額2500万円以下の人が対象の税額控除なんだけど、2500円しか引かれない人も多い。差を埋め切れているとは言えないかな」
よ「なんか、話がややこしい…」
ま「給与所得800万円の人で所得税と住民税、どれくらい税額の差があるかを見てみようか。専業主婦と19歳の子どもがいる前提にしよう」

よ「課税所得額は住民税の方が多いんだね。でも、税額で見ると住民税の方が少ない。…うーん、じゃあ住民税の重税感のナゾはいったい何なんだろ…」
ま「住民税には原則、還付がないからかなぁ。所得税は源泉徴収税額や予定納税額があると、納税額が少なくなったり、払い過ぎた分が還付されたりするでしょ。だから所得税はあまり重荷に感じないのかもしれない」



