2023年度税制改正では、NISAの拡充・恒久化の他、改正された電子帳簿保存法の行方、暗号資産の評価が注目されました。この他、大綱発表直前でにわかに議論が浮上した防衛費の財源確保に伴い、法人税・たばこ税・所得税の3つが増税となりました。
NISAの拡充と恒久化
「制度が拡充される可能性がきわめて高い」として今年の夏、注目を集めたNISA。
【参考】NISA恒久化、金融庁が要望?税制改正の行方と非課税の内容は
予定通り、一般NISAもつみたてNISAも投資額や投資期間が大幅緩和となりました。
次の通りです。
2つの枠の併用が可能に
これまでの「一般NISA」「つみたてNISA」という名称が「成長投資枠」「つみたて投資枠」と変わります。
従来の「一般NISA」「つみたてNISA」は併用できませんでした。
しかし「成長投資枠」「つみたて投資枠」は併用可能です。
つまり、1年あたり最大360万円まで非課税で投資ができます。
投資枠の拡充、非課税の恒久化
また、投資可能額が2~3倍になる他、非課税期間は一生です。
今後、積極的に投資する層が増えると見られます。
電子帳簿保存法も紙保存が実質OKに
2021年度税制改正で大幅に緩和された電子帳簿保存法。
2022年1月から施行されています。
【引用元】「電子帳簿保存法が改正されました(令和3年5月)」(国税庁)
これにより、申告書や会計帳簿の電子保存のハードルが一気に下がりました。
しかし同時に「電子取引のデータ保存」が義務化。
メールやオンラインの明細を紙で保存しても、所得税法や法人税法に規定する「帳簿等の保存」には該当しなくなります。
しかも、単に電子取引を保存すればいいのではありません。
可視性や真実性を確保しなくてはならないのです。
【引用元】来年1月からの新・電子帳簿保存法…紙の保存はアウト?個人事業主が押さえるべきポイントを解説の図を一部変更
【引用元】来年1月からの電子帳簿保存法、結局何したらいい?中小事業主が知っておくべき6つのポイント
2022年度税制改正で、電子取引のデータ保存は実質的に施行が2年延長されました。
【参考】令和4年度税制改正のポイント②事業主を悩ませる「電子帳簿保存法」「インボイス」は緩和された
しかし、2年延長はしょせん猶予措置でしかありません。
2年が過ぎれば原則通り、電子保存が絶対で、紙保存は認められなくなります。
事務負担の大きすぎる電子帳簿保存法は、中小事業主にとって変わらず悩みの種でした。
これが今回の改正で、次のように制度そのものが緩和されました。
電子取引データ保存の検索要件等はなくてもいい
電子取引のデータ保存は、取引先名や金額、年月日で検索できるようにするのが必要でした。
これが不要となります。
ただし、対象となる事業者は次のいずれかです。
- 前々事業年度の売上高が5000万円以下
- 電子取引データを紙で印刷して取引先や取引年月日などで整理し、税務調査のときに提示・提出できるようにしている
電子データを保存すれば、紙で保存してもいい
電子取引データを条件に見合う形で保存できなくても、次の条件すべてを満たしているなら帳簿等の保存はできているとされます。
- 保存要件に従ってデータ保存できなかったことに関し、相当の理由があると認められること
- 税務調査のときに電子取引データのダウンロードに応じ、かつ、印刷した紙を提示あるいは提出できるようにしていること
注意点
この2つの改正は、2024年1月1日以降の電子取引データについて適用されます。
「電子帳簿保存法の改正が骨抜きになった」という話も聞きますが、電子取引データを破棄していいという内容ではありません。
「取引先名・取引金額・取引年月日」といった細かい条件を満たさなくても税務調査のときに対応できればOK、とされただけに過ぎません。
また、売上規模が5000万円を超えるような事業主は、変わらず保存条件に従って電子取引データを保存することが求められます。
誰でも容認されるわけではない点に注意が必要です。
暗号資産の期末評価
法人が保有する暗号資産は現在、期末に時価評価することとなっています。
それが投資目的であっても自社開発であっても、です。
そのため、ブロックチェーンを基盤とした企業の技術革新を阻害しているとして批判が多く集まっていました。
今回、この意見が改正に反映され、自社発行の暗号資産の扱いが次のようになりました。
自社発行の暗号資産は原価法で評価
次の条件を満たす暗号資産は原価法で評価することとなりました。
- 自己が発行した暗号資産で発行時から継続保有しているもの
- 上記暗号資産について技術的あるいは信託という形で譲渡制限が継続的になされていること
暗号資産の取得価額
現在、購入した暗号資産は「購入代価+購入費用」、購入以外の暗号資産は「取得時点の時価」で取得価額を算定することとなっています。
今回の改正で、後者のうち自社発行分については「発行に要した費用の額」で算定することとなりました。
ただし、いずれも施行時期については大綱に記載されていません。