「金融庁が2023年税制改正でNISA(少額投資非課税制度)の拡充と恒久化を要望するらしい」。8月23日、新聞各紙が一斉にこのように報じました。老後資金2000万円問題以降、資産形成に熱心な層から熱いまなざしを注がれたNISA。岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」の後押しになるため、「実現可能性が高いのでは」と見られています。
▶「NISA」「資産運用」の記事をお探しの方はこちらも
金融庁が税制改正に盛り込んだ「NISA拡充案」とは
金融庁が2023年税制改正要望に盛り込んだ内容は、次の2つです。
1. 投資枠の拡充
金融庁が税制改正要望の1つに出そうとしている「投資枠の拡充」とは、「年間投資枠を広げる」ということです。
現行の制度だと「一般NISAは年120万円、つみたてNISAは年40万円」が投資額の上限となっています。
この上限をさらに引き上げよ、と言っているのです。
しかし、いくらまで拡充すべきとしているのかは明らかになっていません。
ただ、7月に日本証券業協会が発表した提言では、「一般NISAは年240万円、つみたてNISAは年60万円」と例示されています。
この他、ジュニアNISAの2023年末廃止を受け、つみたてNISAを未成年者でも投資できるようにすること、つみたてNISAの投資対象に株式を加えることも要望に出すと見られます。
2. 投資可能期間の恒久化
現在、一般NISAは2028年まで、つみたてNISAは2042年までの期間限定の制度となっています。
金融庁は、この期限を撤廃し、NISA制度を恒久化すべし、と要求する模様です。
NISAとは?メリット・デメリットを確認
ここ最近のニュースから急にNISAが気になり始めた方もいるかもしれません。
そういった方向けに、NISAの概要をざっとお伝えしましょう。
NISAは2014年開始、「貯蓄から投資へ」政策で登場
NISAは「少額投資非課税制度」という正式名称にある通り、「少額投資なら譲渡益も配当益も課税しない」という制度です。
本来、株式などに投資をすると、譲渡益や配当益に課税されます。
しかし、NISA制度での投資なら、すべて非課税なのです。
現在、「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3つがあります。
特に人気なのは、一般NISAとつみたてNISAです。
それぞれ、次のような内容となっています。
当初は一般NISAしかなく、金銭的に余裕がなく、投資に慣れていない層にはなかなか利用しづらい制度でした。
しかし、2016年1月にジュニアNISA、2018年1月につみたてNISAが登場。
制度も少しずつ使い勝手のよいものに変更されました。
結果、利用人数も増え、2023年9月末現在、一般NISA・つみたてNISAの口座数は1713万2399口座となっています(金融庁「NISA口座の利用状況調査(2021年9月末時点)」より)。
本来、10年間で制度終了となる予定でしたが、利用者の増加や国民の資産形成の重要性から、期限が延長されました。
NISAのメリット
NISAの1つ目のメリットは「譲渡益も配当益も非課税」という点です。
本来、上場株式や投資信託の運用益には、所得税と住民税がかかります。
譲渡益は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の分離課税、配当益は総合課税か分離課税の対象です。
現在、特定口座制度があるおかげで「好きなときだけ確定申告をして、そうでないときはほったらかし」という気軽な投資が可能です。
しかし、それでも「あまり課税されたくない」というのが国民の本音です。
なおかつ投資に慣れていなければ「投資=怖いもの」として、口座開設すら面倒に感じられます。
しかし「売買しても配当をもらっても非課税」となれば、初心者でも「やってみようかな」という気持ちにもなります。
なおかつ、つみたてNISAなら、毎月の収入がそれほど多くなくても投資が可能です。
2つ目のメリットは「年齢制限がない」という点です。
もう1つの投資対象として人気なものに、iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。
こちらも所得控除や受取時の課税が少なくて済む点などで注目を集めています。
ただ残念なことに、年齢制限があります。
2022年8月現在、iDeCoに加入できる年齢は20歳以上65歳未満です。
高齢者は利用できません。
一方、NISAには年齢制限がありません。
「投資をやってみたい」「少しでも資産形成をしておきたい」という70代でも利用できるのです。
NISAのデメリット
一方、デメリットもあります。
1つ目は、損益通算ができない点です。
他に特定口座などで運用している株式があり、そこで損失が生じたとしても、NISAの利益と相殺したりすることはできません。
2つ目は、他のNISA制度と併用できない点です。
一般NISAとつみたてNISAを同時に利用することはできません。
3つ目は、非課税期間は永遠ではない点です。
一般NISAであれ、つみたてNISAであれ、非課税には期限があります。
期限を迎えたらロールオーバーか一般口座での運用か、あるいは現金化のいずれかの選択を迫られます。