国民保険料の支払いは義務であるものの、払っても損するのではないか、年金を受け取れないのではないかという懸念から納付しない人もいます。では、実際に払い損になるのかどうか解説していきます。

この記事の目次

少子高齢化で若者は払い損なのか?

現在の日本では少子高齢化が進み、若い世代を中心に「公的年金について払った保険料が戻ってこないのでは」「年金が受け取れないのでは」という不安の声が上がっています。

まずは、日本年金機構と厚生労働省が発表している資料をもとに、自分の支払額と受給額についておおよそのイメージをつかみましょう。

年金の負担額と給付額を比較

まずは下の図をもとに、年度ごとの支払額と受給額を比較してみてください(※記載の料金は毎月納付した場合のものです)。

年度 国民年金保険料 付加保険料
平成29年 197,880円 4,800円
平成30年 196,080円 4,800円
令和元年 196,920円 4,800円
令和2年 198,480円 4,800円
令和3年 199,320円 4,800円

(参考:日本年金機構 国民年金保険料の変遷より)

年度 厚生年金+国民年金 国民年金
平成29年 1,764,612円 666,216円
平成30年 1,750,380円 668,496円
令和元年 1,753,944円 671,352円
令和2年 1,753,740円 675,024円
令和3年 1,747,980円 676,416円

(参考:令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況P8,21|厚生労働省

国民保険料は年々増加しており、令和5年度の月額国民保険料は16,610円でした。

令和6年度の月額国民保険料は16,980円に上がります。

仮に令和6年度の保険料で20歳から60歳まで保険料を納めた場合、負担額は下記になります。

16,980円×12カ月×40年間=8,150,400円

一方、65歳~67歳までにもらえる国民基礎年金は令和5年度で年795,000円、68歳以上でもらえる国民基礎年金は令和5年度で年792,600円でした。

そうなると、65歳から年金の受給を開始した場合に76歳まで生きていればそれ以降はもらい得になります。

また、サラリーマンの場合は厚生年金保険料を納めています。

支払う厚生年金保険料は給与の額によって変わりますが、例えば月300,000円の給与であれば、1カ月あたりの自己負担額は国民年金分も含めて27,450円になります。

40年間では13,176,000円の支払いです。

厚生年金は国民年金に上乗せした額をもらえるため、65歳~67歳までの受給額は合わせて年1,898,784円、68歳以上だと1,896,384円になります。

つまり、72歳以上生きていればそれ以降はもらい得になる計算です。

年金の仕組みについて理解を深める

年金を受け取れないと心配する方には「制度の破綻によって自分の積立分が失われる」と思っている人も多くいます。

しかし、日本の年金は賦課方式と呼ばれるもので、その時々に納められた保険料から支給される方式です。

現役で働いている世代が、年金受給者を支える方式になっています。

賦課方式を取っている日本の年金制度の根幹にあるのは、社会全体による世代間扶養になります。

年金はそもそもなぜ必要?

年金制度はなぜ必要なのかという問いに対して、厚生労働省がホームページで示している見解は下記になります。

「私たちの人生には、自分や家族の加齢、障害、死亡など様々な要因で自立した生活が困難になるリスクがあります。こうした類のリスクは予期することが難しいため、個人だけで備えるのには限界があります。こうしたリスクに備える1つの手段が公的年金です。」とまとめられています。

公的年金は老後に支給されるだけではなく、ケガや病気で障害を負ってしまった方に支給される障害年金、一家の大黒柱が亡くなってしまった場合に支給される遺族年金といったものがあり、予測できないリスクに公的年金は対応しています。

そのため、公的年金は様々なリスクに備えた保険という見方もあります。

国民年金と厚生年金の違い

日本の年金制度は3階建てになっており、1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金、3階部分はiDeCoや企業年金といった私的年金となっています。

1階部分の国民年金は日本に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入するものです。

2階部分の厚生年金は会社員や公務員が加入するものであり、厚生年金保険料には国民年金分の保険料も含まれています。

そのため、厚生年金保険料を払っている人は、将来的に国民年金と厚生年金の両方を受け取ることができます。

国民年金保険料の確認方法

国民年金保険料は、日本年金機構の「ねんきんネット」により確認することができます。

パソコンやスマートフォンで24時間確認することができます。

国民年金保険料を納付していない期間や厚生年金保険の標準月額に大幅な変更がある場合など、特に確認が必要な部分はアイコンで表示されます。

ねんきんネットでは1年間の保険料納付額や、これまでの保険料納付額を確認することができ、このまま年金を払い続けた場合の将来の給付見込み額もわかるため、確認しましょう。

年金の前納による割引制度

国民年金保険料は一定期間の保険料を前払いすることで割引が適用されます。

2年後まで前納することができ、割引額は前納する期間や支払方法によって変わります。

詳細は下記をご覧ください。

前納の種類
2年前納
1年前納
6カ月前納
当月末振替
毎月納付
(早割)
1回あたりの納付額
納付書払い
387,170円
194,720円
98,310円
16,520円
クレジットカード払い
口座振替 385,900円 194,090円 97,990円 16,470円 16,520円
割引額
納付書払い
14,830円
3,520円
810円
クレジットカード払い
口座振替 16,100円 4,150円 1,130円 50円

(引用:国民年金保険料の前納

なお、納付書により納付する場合、前納用の納付書を使用する必要があります。

前納用の納付書が手元にない場合は、お近くの年金事務所にお問い合わせください。