65歳から受給できる老齢年金は定期的に受け取れるため、老後生活の大きな柱となります。この老齢年金については受給額で老後の生活資金を考えている人も多いと思われますが、実は大きな落とし穴があります。

この記事の目次

年金受給額から引かれる金額

「ねんきん定期便」などで将来受給できる年金額を把握できますが、受給額がそのまま全額手元に入る訳ではありません。

年金も収入とみなされ、税金や社会保険料が引かれるからです。

年金の手取りについて、また、引かれる金額の詳細について解説していきます。

そもそもの年金受給額

令和3年度末時点での国民年金の平均年金月額は5万6,368円。

厚生年金の平均年金月額は14万3,965円になります。 

厚生年金については納付月数と年収が関係するため、会社員でいた期間が長いかつ年収が高かった人ほど受給できる厚生年金は多いです。

公的年金の給付水準に関しては「所得代替率」というもので表されます。

これは、年金を受け取り始める65歳時点での年金額が、現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいの割合かを示したものです。

例えば、所得代替率が50%となると、その時点での現役世代の手取り収入の50%を年金として受け取れるということになります。

一例として、2019年度の所得代替率は61.7%でした。

年金にもかかる税金や社会保険料

年金から天引きされるお金には、次の4つがあります。

  • 国民健康保険料(75歳未満)あるいは後期高齢者医療保険(75歳以上)
  • 介護保険料
  • 所得税
  • 住民税

年金からどれだけのお金が天引きされるかは一律ではなく、年金額や家族構成の他、住んでいる自治体などによって異なってきます。

例えば、東京都在住で年齢65歳〜74歳、扶養親族なしで収入は年金のみ240万円という場合で考えてみましょう。

この場合、天引きされる合計額と手取り額は下記になります。

国民健康保険 13万7,428円
介護保険料 9万300円
所得税 2万9,600円
住民税 6万9,200円
天引き額合計 年32万6,528円
年金収入240万円-天引き額32万6,528円=年手取り額207万3,472円
手取り月額 17万2,789円

今回のケースでは、およそ年金額の13%程度が天引きされるという結果が出ました。

多くの人は年金額面の10%〜15%程度が天引きされると考えていいでしょう。

もらえる年金額が多くなるほど、天引きされる社会保険料や税金も多くなっていきます。

年金の手取り額シミュレーション

ここでは、実際に年金がいくらもらえるのかをシミュレーションします。

年金をいくらもらえるかは、個人の年金受給額や住んでいる自治体、単身者か夫婦かによっても違ってきますので、おさえておきましょう。

単身の場合の年金手取り額

年金手取り月およそ15.6万円(年およそ187万円)
年金受給額
月20万円
天引き額
△月およそ4.4万円
(年240万円) (△年およそ53万円)
国民年金
月6.5万円 所得税 △月1.7万円
(年78万円) 住民税 (△年およそ21万円)
厚生年金
月13.5万円 介護保険料 △月およそ2.7万円
(年162万円) 国民健康保険料 (△年およそ32万円)

※40年間税金を納めた場合

単身で月20万円の年金を受給する場合、税金や社会保険料で4.4万円引かれ、手取りはおよそ月15.6万円になります。

年間で考えると、額面金額240万円でおよそ53万円が天引きされ手取りはおよそ187万円になります。

夫婦の場合の年金手取り額

年金手取り月およそ19.3万円(年およそ231万円)
年金受給
月25万円
天引き額
△月およそ5.7万円
(年300万円) (△年およそ69万円)
国民年金
夫: 月6.5万円(年78万円) 所得税 △月1.6万円
妻: 月6.5万円(年78万円) 住民税 (△年およそ19万円)
厚生年金
夫:月12万円 介護保険料 △月およそ4.2万円
(年144万円) 国民健康保険料 (△年およそ50万円)

※40年間税金を納めた場合
※妻は40年間専業主婦とした場合

 夫婦の場合はそれだけ世帯収入が増えるため、税金や社会保険料が上がります。

月25万円の収入で5.7万円引かれ、月の手取りは20万円を下回るおよそ19.3万円になります。

単身世帯と比較した場合に、税金や社会保険料だけでなく生活にかかるお金も増えるため、手取りを把握した上で老後の生活を考えることが必要です。

正確な年金手取り額を知るためには、各種税金や社会保険料がいくらかかるかを把握する必要があります。

自治体によって税率が異なってくるため、正確な金額を知りたい場合は、お住まいの自治体のホームページで保険料などをシミュレーションしてみましょう。

日本年金機構や年金相談センターに相談してみることもおすすめです。