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第1回 頭の痛い高齢者の財産管理

日本が超高齢社会の仲間入りをして、まもなく7年が経過します。1億2711万人の総人口のうち、65歳以上の高齢者は3392万人(65~74歳1752万人、75歳以上1641万人)を占め、高齢化率は26.7%まで上昇しています(2015年10月1日現在)。2020年には30%に達する見込みで、比例して、高齢者の財産管理・運用に関する不安や困りごとも急増しています。今回は、高齢者とそのご家族が直面する可能性の高い「困りごと」について紹介します。

1.お金があっても本人のために使えない

高齢になり心身が衰えてくると、「字がうまく書けない」「銀行などの金融機関に1人で行けない」「判断力が衰える」などの理由から、お金の出し入れや管理が難しくなります。パスワードを忘れたり、操作方法がわからなくなったり、印鑑を保管した場所がわからなくなったりということも日常茶飯事です。
さらに、認知症が進んで、本人の判断能力や意思表示能力が低下すると、「成年後見制度」を利用しない限り、株や投資信託、不動産の売買、預金の解約・引き出しなどはできなくなり、生活費や医療・介護の費用、施設等への食費・居住費の支払いが、本人の財産からできないという事態が起こりえます。
なお、成年後見制度とは、財産管理や介護サービスの契約を自身で行うことが難しくなった人を法律的に支援する制度のことです。たとえ、夫婦や親子であっても、この制度によって自分が後見人になるか、裁判所が選んだ後見人にお願いしなければ、認知症の人の財産を動かすことはできないのです。

本人が望む暮らしをさせてあげるためにも、十分に判断能力があるうちから、ご家族で相談し、準備をしておくことが大切です。

2.不動産が処分できない

病気やけがで意識不明になったり、認知症で判断能力や意思能力が衰えると、自宅や賃貸物件などの不動産取引やリフォームなどの契約もできなくなります。たとえ成年後見制度を利用しても、被後見人(後見を受けている人)の自宅については、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定のほか、贈与や建物の取り壊しに際しては、家庭裁判所の許可が必要になるなど、実行のハードルが高くなってしまいます。また、許可されないケースも少なくありません。

3.相続手続きができない

相続が発生したとき、相続人の中に認知症などで意思能力がひどく衰えた人がいる場合には、その人は遺産分割協議に参加できません。その人に成年後見人がいれば、その後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加できますが、成年後見人が一緒に相続人になる場合などには、特別代理人を立てて、その代理人が遺産分割協議に参加します。
成年後見人や特別代理人の選定には各種手続きが必要になるため、相続手続きには時間がかかってしまいます。さらに、成年後見人や特別代理人は、法定相続分より少ない分割となるなど、被後見人本人に不利となる内容を認めるわけにはいかないため、遺産分割の選択肢も狭くなります。例えば、認知症の親や祖父母が相続人になり、高齢なので相続財産は少なめでいいと周囲が考えても、それを実現することは難しいのです。

高齢者が増えるにつれて、以上のような困りごとが、あちこちで起こっており、今後ますます増加すると見込まれます。老後のライフプランとして、退職後の必要資金や年金、相続・贈与等財産などについては考えている人も多いでしょう。元気なうちは「認知症になる」「判断能力が衰える」なんてことは想像もできませんから、「自分や親の判断能力が衰えたときの財産管理や運用」については、実は見落としがちなのです。早いうちから、本人だけではなく、ご家族も一緒にどう対処するかについて考えておくべきです。

この連載では、実際に相談があった困りごとの実例や対処法、事前の対策についてご案内していきます。

著者: 山田静江

終活アドバイザー/ファイナンシャル・プランナー(CFP®)

NPO法人ら・し・さ 副理事長。早稲田大学商学部卒業後、東海銀行(現 三菱東京UFJ銀行)に入社。その後、会計事務所勤務、独立FP会社勤務を経て2001年にFPとして独立し、現在に至る。さまざまな世代のライフプランニングに関するセミナーや、執筆・監修、個人相談、FP関連業務の企画等を行っている。NPO法人ら・し・さでは、終活とオリジナルエンディングノート(ら・し・さノート)等の普及活動を行っている。
■NPO法人ら・し・さ
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