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第2回 頭の痛い高齢者の財産管理:認知症の母が緊急入院

高齢の親を故郷に残している場合、元気で暮らしているかどうか心配なものです。とくに、病気やケガなどをしてしまったときは大変です。遠方であれば、連絡があってもすぐには駆けつけられませんし、交通費もかかります。さらに、高齢者の療養には長い時間がかかり、退院後も介護の問題が残ります。仕事をしていれば、ひんぱんに休暇を取らざるを得ません。
今回紹介するのは、遠く離れて暮らす母親が病気で入院してしまい、いろいろな「困った」を経験しているA子さん(50歳)のケースです。

A子さんの母親B子さん(80歳)は九州で一人暮らしをしています。ある日、母親の友人から、「B子さんが倒れて病院に運ばれた」と連絡がありました。一人暮らしはできるレベルでしたが、前年から少し認知症の症状が出ていたB子さんを心配し、「何かあったときのために」と、母の友人に携帯の電話番号を知らせておいたのです。安心したのもつかの間、病院に到着すると母親のB子さんは集中治療室に入っていました。医師からは「命に別状はないものの深刻な状態である」と告げられました。

■入院で認知症が悪化

病名は脳出血でした。左腕と左足に麻痺がありましたが、B子さんはその日のうちに意識を回復し、自分の状況を冷静に把握しているように見えました。しかし、翌々日に集中治療室から観察室に移ったところ、B子さんは興奮しパニック状態に。自分が集中治療室にいたことは覚えておらず、「家に帰りたい」と大騒ぎでした。入院で一気に認知症の状態が悪化したのです。

主治医からは「開頭手術はリスクが高く、必要性もないためやらない。ここは急性期の病院であるため、出血が落ち着いたらリハビリ病院へ転院してください」と説明がありました。

母親のB子さんが落ち着いたころに、リハビリ病院へ転院することが決まりました。A子さんはその前に東京に戻り、2日間出社して仕事を片付け、再び病院へ。幸い職場は介護に理解があり、会社のパソコンを持ち帰り、様子を見ながら仕事を続けていたのです。

ところが留守にした3日間に母親の認知症の症状はさらに悪化していました。
A子さんにバッグを投げつけ、「通帳持って逃げたのか!」「勝手に家を売り払ったのか!」と、暴言を吐くのです。「急な入院で認知症が悪化することもある」という話を聞いていたA子さんはある程度の覚悟はできていましたが、この急変ぶりには泣きたくなりました。職員さんへの暴言や攻撃もありましたが、「私たちは慣れているから大丈夫ですよ」と声をかけられ、気持ちは楽になったそうです。

■財産の大半である株式や投資信託は売却できず

高齢なB子さんのリハビリには最低でも3~6カ月必要で、その後も一人暮らしは難しく、施設等に入るしかないだろうと言われました。A子さんは兄と相談して母親の年金や預貯金などを調べました。

A子さんは、母親が落ち着いていた入院初期に、年金が振り込まれる預金については「代理人届け」を書いてもらっていたため、預金口座の手続きは代理で行うことができました。母親の公的年金と個人年金の収入は月額にして20万円ほどあるため、当面の入院費等の費用はここでまかなえることが分かりました。しかし、退院後に有料老人ホームなどに入居するための一時金などの費用が足りるか心配でした。

調べてみると、母親は株取引が好きだったようで、金融資産の大半は証券会社にありました。しかし、株式や投資信託の売却は原則として本人しかできません。代理人の手続きをして売却することは、認知症が進んでいて感情の起伏が激しいことから、本人の承諾が得られるとは思えず断念しました。成年後見制度の利用も検討しましたが、まだ後見制度を利用するほど何もわからない状態ではないことと、手続きに手間も時間もかかることが分かったので、当面は見送りました。

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