デジタル化を更に推進するため優良な電子帳簿の対象範囲の見直しが行われました。

この記事の目次

優良な電子帳簿の普及・一般化のための帳簿の対象範囲の合理化・明確化について解説します。

1. 優良な電子帳簿

経理誤りを自ら是正しやすい環境を整えている優良な電子帳簿については、その記録事項に関して修正申告書等の提出があった場合には、過少申告加算税を5%軽減するという措置が設けられています。

これは、会計監査や税務調査の場面において事後検証性の高い帳簿を備えることが望ましいことに加え、内部統制や財務諸表の対外的な信用性を確保する観点から、その普及・一般化を進めるために、優良な電子帳簿に誘導するためのインセンティブ措置として設けられているものです。

2. 適用要件

優良な電子帳簿として過少申告加算税の5%軽減措置の適用を受けるためには、課税期間の初日から、一定の国税関係帳簿(個人・法人の青色申告者、消費税事業者の備付ける帳簿)を一定の保存要件に従って備付けて記録し、あらかじめ(その法定申告期限までに)その旨の届出書を提出する必要があります。

保存要件に従って保存する対象帳簿ですが、令和5年末までに法定申告期限等が到来する国税については、適用を受けようとする税目(所得税・法人税・消費税)に係る全ての帳簿を電子帳簿保存法施行規則第5条第5項の要件に従って保存しておかなければなりませんでした。

これは、例えば、所得税法又は法人税法上の青色申告者等が保存しなければならないこととされている帳簿全てを保存要件にしたがって保存することが求められているものであり、その対応には多大な手間がかかり、インセンティブ効果も限定的なものになるという指摘も受けていたところです。

3. 対象帳簿の範囲の見直し

2024年1月1日以後に法定申告期限等が到来するものからは、対象帳簿の範囲を合理化・明確化することにより、一層の普及・一般化を図ることとされています。

具体的には、所得税及び法人税に係る優良な電子帳簿の範囲を次のとおりとすることとされています。

消費税については従来のままです。

(1)仕訳帳

(2)総勘定元帳

(3)次に掲げる事項(申告所得税に係る優良な電子帳簿にあっては、ニに掲げる事項を除く。)の記載に係る上記(1)及び(2)以外の帳簿

イ 手形(融通手形を除く。)上の債権債務に関する事項

ロ 売掛金(未収加工料その他売掛金と同様の性質を有するものを含む。)その他債権に関する事項(当座預金の預入れ及び引出しに関する事項を除く。)

ハ 買掛金(未払加工料その他買掛金と同様の性質を有するものを含む。)その他債務に関する事項

ニ 有価証券(商品であるものを除く。)に関する事項

ホ 減価償却資産に関する事項

ヘ 繰延資産に関する事項

ト 売上げ(加工その他の役務の給付その他売上げと同様の性質を有するものを含む。)その他収入に関する事項

チ 仕入れその他経費又は費用(法人税に係る優良な電子帳簿にあっては、賃金、給料手当、法定福利費及び厚生費を除く。)に関する事項