最近は売り手市場ということもあり、転職者が複数の事務所から内定をいただき、選べる状況になっています。では、採用に成功している事務所、反対に失敗している事務所では何が違うのでしょうか?

選ばれる事務所の選考プロセス

まず大前提として、会計事務所側も「選んでもらえる事務所」にならなければなりません。求める人材の要件と転職希望者の志向とが合致していることはもちろん必要条件になりますが、現状、転職者を各事務所が取り合っていることを念頭に選考を進めなければ、他の事務所に取られてしまいます。
前回「採用活動の見直し 大手会計事務所も取り組む重要な改善ポイント」でもお話ししましたが、優秀な転職希望者は他事務所でも「採用したい人」です。従って、選考回数が多い事務所はそれだけで後手にまわります。
また、面接官の印象も非常に大事で、転職者が求人先を比較検討する際に、同様の業務ができ、キャリアアップできる環境であれば、「あなたを欲しい」と言ってくれる事務所を選択することでしょう。
面接では人物を見極めるためにいろいろな質問をすることになりますが、聞き方や接し方を少し工夫することで、転職者の受ける印象がガラッと変わります。

たとえば、よくあるケースとして、面接官が「直近の勤務が短いね。今回も早々に辞めない?」「試験合格まで時間がかかっているね、要領は悪い方?」「うちの事務所は忙しいけど大丈夫?」などと質問することがあります。こうした話し方や言葉の投げかけは、転職者にいい印象を与えません。
聞き方、伝え方を転職者に寄り添ったかたちに変え、ネガティブなワードを避けて質問するのもテクニックの一つです。

ポイントは面接官

ある中堅会計事務所の悪い採用例です。
面接官が「今までの経験はうちでは全く使えない。一番下から働いてもらうがやる気ある?やる気があるなら次の面接に進めるが、覚悟ないなら他に行きな!!」といきなり一言。
さらに、この事務所の選考回数は2回+条件面談で3回あります。マネージャークラスの面接官が1次面接を担当し、2次面接では代表がお会いします。このような選考方法を取る事務所は多いので、これは大きな問題ではありません。
問題は、1次面接でマネージャー2名が面接予定だったのですが、1名が業務の都合で面接に同席できなかったため、1回選考回数を増やしたこと。書類選考に1週間近くかかり、さらに面接が3回(計4回の選考!)。1ヶ月以上選考期間がかかりました。
転職者にとっては、面接での印象も良くない上、選考時間がかかるとなれば、志望順位は下がって当然です。結局、第一希望にならず、他社への入社を決めました。3事務所から内定をいただき、選べる状況にあったのです。
「経験が少ないのですぐに顧客対応はできないかも知れないが、一緒にサポートするし、勉強できる環境だよ」「最初は一から頑張ってもらうけど、事務所で応援するから一緒に頑張って成長していこう」「興味を持ってもらえたなら私から代表に推薦するけど、次の選考に進んでみない?」と面接官が伝えていたらどうでしょう。この転職希望者の優先順位として、この事務所が一番になったかもしれません。