前回は採用に成功している小規模・個人会計事務所についてお話させて頂きした。
今回は最近聞くようになった新しい採用手法を導入している会計事務所と、良くある失敗事例などをご紹介します。

前回まで、採用におけるポイントは「経営理念の策定」「評価制度の導入」「面接官の選定、ヒアリング項目の設定」とお話させて頂きましたが、ここ最近、時短・フレックス、変形労働など労働時間の弾力化を強く打ち出して採用成功している事務所も御座います。
女性だけではなく、男性も親の介護、育児フォローなど時間的な制限を希望する方も増えてきました。日本における人口構造上の問題でもありますので、しばらくは続くかと思います。一般企業では導入も始まっておりますが、会計事務所で積極導入している所はとても少ないのが現状です。

既に医療分野では出産、育児などの理由で職場を退いた看護師に対して労働環境の整備をして現場復帰してもらう、という動きもありますが、税理士業界でも同じ動きをする必要もあります。労働時間の弾力化を図り、一旦職場を退いた方に復帰して頂く、又は同じような主婦税理士を採用するなど、他の事務所に先駆けて女性を採用して労働力を確保している事務所も増えてきました。フレックス制、時短、在宅勤務可などは他事務所と差別化が図れます。

独立支援、暖簾分けを推進している会計事務所もあります。
面接の際に独立を仄めかすのは一般的にタブーですが、税理士資格を取得すれば潜在意識の中で独立心は芽生えるもの。現時点でそのつもりはないが、将来的に気持ちが大きくなっても暖簾分け制度などの支援もある、という心理的な安心感をもたらします。また導入事務所を経過的に追ってみますと結果的に独立せずに社内税理士として定着している方が多いようです。制度としては新規獲得売上の○パーセントは給与に配分など、正社員として雇用時もインセンティブを持たせてる点が特徴的です。

良くある失敗例としては、面接回数、選考結果、本人の意思決定も悪戯に短縮する手法です。
会計事務所側としては良かれと思って短縮したものの、応募側は「忙しくて相当人手 が足りないのでは・・」「ある程度の方であれば誰でもよいのでは・・」「定着率が悪い事務所なのでは・・」とネガティブに受け取る人もいます。特に内定に対する承諾の可否を早く迫るケースでは、応募者側も“納得いく職場選び”という志向に沿わない事も多く、内定辞退というケースに陥りやすいです。

もちろん良い人を逃がさないように、面接後に即決という採用手法(ある種の囲い込 み)もある場面では成功する事も御座いますが、入所後の定着まで中長期的に見ると 決して多くありません。
特に小規模事務所の場合は1人入所して、1人退社するという事は所内でもインパクトのある事柄なので、相応の時間をかけて選考した方が良いと思います。

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