前回は、クラウドツールの選定方法やENJOINT税理士法人の導入事例についてご紹介しました。今回はfreeeを中心としたENJOINTのバックオフィスの全体像と、そのほかツールとの連携による業務効率化について詳しく解説します。
智原翔悟(ENJOINT税理士法人代表、税理士)
2017年4月開業、
また、オウンドメディア『
※freee認定アドバイザー制度とは?
会計事務所とfreeeがパートナーシップを形成し、個人事業主・中小企業の方々のスモールビジネスを共に成功に導くパートナープログラム。https://adv.freee.co.jp/advisor
freeeを中心としたバックオフィスの構築
バックオフィス業務の効率化を進めるため、ENJOINTではfreeeを中心とした運用体制を整えています。
freeeは会計業務だけでなく、税務、人事、契約管理など、幅広い業務を統合できる優れたクラウドツールです。
上図は、ENJOINTのバックオフィスの全体像を示しています。ご覧のとおり、freeeのさまざまなプロダクトを取り入れています。
ただし、最初からこのようなフローで運用していたわけではありません。新しいプロダクトや機能がリリースされるたびに検証を重ね、試行錯誤を繰り返しながら、ツールの入れ替えやフローの改善を行ってきました。現在の形は2024年9月時点の運用であり、1年後にはさらに進化している可能性があります。急速に変化する時代において、情報収集とブラッシュアップを続けることが成功の鍵だと考えています。
それでは、freeeを中心としたバックオフィスを構築するメリットをご紹介します。
- 会計業務の効率化
freeeは、自動仕訳機能や銀行明細の自動取り込みなどを提供し、日々の会計業務を大幅に効率化します。これにより手動でのデータ入力が減り、経理担当者はより重要な戦略的業務に集中できるようになります。さらに、リアルタイムでの経営状況の把握が可能となり、迅速な意思決定をサポートします。 - 統合型ERPとしての機能
freeeは会計にとどまらず、給与計算、経費精算、人事労務など、企業のバックオフィス全体を統合的に管理するERP(Enterprise Resources Planningの略。「ヒト・モノ・カネ・情報」の企業の経営資源を統合的に管理し、有効活用する手法)ソリューションを提供しています。
これにより、異なるシステム間でのデータの二重入力や手動での連携作業が不要になり、データの一元管理が実現します。業務プロセスが統一されることで、効率的なワークフローが構築され、結果的に運用コストの削減にもつながります。 - 他のツールとのAPI連携の柔軟性
freeeは、他の業務ツールとのAPI連携が非常に柔軟です。ECサイトや販売管理システム、在庫管理システムなど、さまざまなシステムとスムーズにデータをやり取りできるため、バックオフィス業務の自動化が一層進みます。
この連携により、業務全体の効率が大幅に向上します。
kintoneとの連携による契約手続きの効率化
ENJOINTでは、kintoneとfreee、Dropboxといったツールを活用し、契約手続きの効率化を実現しています。以下の3つの連携ポイントに焦点を当て、契約業務の改善についてご紹介します。
- kintoneとfreee会計の連携
kintoneとfreee会計のAPI連携により、kintoneに登録された新規クライアントの情報が、freee会計の取引先に自動的に同期され、データの二重入力を防ぎます。
これにより、kintone内で発行した請求情報等をfreeeに連携することができ、作業効率が大幅に向上しました。具体的にENJOINTの経理部門では年間約60時間の削減になりました。 - kintoneとfreeeサインの連携
kintoneに登録された契約情報をもとに、freeeサインとの連携により、契約書の作成と送付が1分程度で完了します。手作業で行っていた契約書作成プロセスが自動化され、業務負担が軽減しました。
特に契約更新時には、kintoneのデータを利用して迅速に契約書を送付でき、契約更新手続きのスピードが飛躍的に向上し、これにより、アップセルやクロスセルの機会も効率的に捉えられるようになりました。 - kintoneとDropboxの連携
新規契約時には、kintoneとDropboxの連携により自動でフォルダ階層が作成されます。フォルダ構成が統一されることで、資料の検索性が向上し、担当者ごとの作業のばらつきがなくなりました。
コクヨの調査によれば、年間で1人当たり約80時間もの時間が書類探しに費やされているとのことです。データ保存ルールの統一は、大きな業務改善につながります。
まとめ
ENJOINTでは、freeeを中心としたバックオフィス業務の効率化を推進しています。自社での運用を通じて培ったノウハウに加え、さまざまな業種のクライアントへの導入経験を基に、さらなる業務効率化と品質向上を目指しています。
今後も自社およびクライアント双方にとって最適な運用体制を構築し、変化に柔軟に対応しながら持続的な成長をサポートしていきます。
次回でこの連載は最終回となります。ツール導入後の社内定着を促す教育やマインドセットの確立、IT人材の採用・育成のポイントについて詳しく解説します。