今回の会計人ライブラリーで紹介するのは、税理士法人K・T・Two代表社員の佐藤敏郎氏による『インボイス制度・電子帳簿保存法への実務対応』。まとめて対応したほうがいいインボイスと電帳法を一冊でわかりやすく解説した実務書です。

書籍・インボイス制度・電子帳簿保存法インボイス制度・電子帳簿保存法への実務対応
佐藤敏郎(税理士法人K・T・Two代表社員、公認会計士・税理士)
(大蔵財務協会・発売日:2024/08/29)

http://bookshop.zaikyo.net/shopdetail/000000002043/

著者本人が語る本の見どころ

Q まずは『インボイス制度・電子帳簿保存法への実務対応』の紹介をお願いします。

A この書籍は、令和5年1月23日に発刊された『国税速報』の第6740号から令和6年5月27日の第6804号まで、18回に渡って連載をさせていただいた「税務行政のDX化に向けての実務対応」を編集・再構成したものです。

大きなテーマは税務行政のDX化にあるのですが、税務行政のDX化には納税者である個人や企業のDX化が必須です。電帳法やインボイス制度の運用開始にともなって、企業の経理実務にどのような影響を与えるか、何を変えなければならないのかを実務家の方々にお伝えすることを目的にしたものです。

対話形式にしたのは、出版元である大蔵財務協会の方々からのアドバイスもありますが、制度が複雑だと説明も難しくなるので、専門家が経理担当者の質問に答える対話形式にして専門知識をわかりやすく説明しています。

Q インボイス制度の導入と電子帳簿保存法の改正により、クライアントから「困っている」「負担が増えた」という声はありましたか?

インボイス制度の運用開始直後の令和5年12月31日で宥恕(ゆうじよ)規定が廃止となり、電子取引に該当した場合に領収書等を出力して保全できなくなる、電帳法の第3類型である電子取引について、いち職業会計人として多くのクライアントから質問をいただきました。

それもあって、どういう制度なのか、何をすればいいのかを理解いただくために執筆をしました。

Q 本書の解説に、「電子帳簿保存法とインボイス制度のそれぞれの概要と関係性及び実務で対応する(中略)ポイントを解説します」とあります。インボイスと電帳法をそれぞれ分けて解説する本もありますが、その「関係性」についてさわりを教えてください。

A 「さわり」とは難しいですね…電帳法自体は歴史的にかなり前からある法律ですが、その存在自体があまり知られていなかった。

ですが先ほども申し上げたとおり、電子取引に関わる法改正で「不安」が経理の現場で先行したため宥恕規定が導入されましたが、結果としてインボイス制度の運用開始時期と3ヶ月の違いでその宥恕規定が廃止されることになったため、経理実務が一気に変わるという印象が強くなりました。

どちらも「領収書」をエビデンスとする点で共通していることから、実際に検討を進めると2つの制度をまとめて検討する必要がある、別の言い方をすると電帳法とインボイス制度を個別に検討すると、どちらかにとって不都合な運用になる可能性があるということです。

Q 実務で対応するにあたって気をつけるポイントを、インボイス・電帳法それぞれでひとつ教えてください。

A 「ひとつ」ですか…これまた難しい。インボイス制度には、多くの特例措置や経過措置があります。これに該当するか否かで実務負荷も大きく変わりますし、納める消費税額も異なる可能性があります。本書でもそこはかなり詳細にふれています。

電帳法は、電子取引対応に尽きると思います。紙による保存をしないということは、紙保存と電子保存の併用か、紙を全てスキャンして電子保存するかの二択になります。そのどちらにするかで経理の業務フローが変わりますので、そこが大きなポイントです。本書では、その2つのパターンを具体的なフローチャートで説明しています。

Q 佐藤先生ご自身についても聞かせてください。

A もともと経営コンサルタントになりたくて、そのためには何か社会的に信頼を得られる資格が必要というのもあって、公認会計士を目指しました。試験に合格してからも、企業経営に関わる仕事を30年以上続けてきました。

17年前に家業の税理士法人を承継して運営の仕組み作りをしつつ、いまは次の世代への承継をしています。引き続き実務家としても企業の再生やグループ再編の仕事をしながら、企業などの社外役員の仕事も多くさせていただき、事務所のメンバーから紹介してもらった熊本学園大学の会計専門職大学院で講師もさせていただいています。

座右の銘である「恩送り」を少しずつ実践しているところです。

Q 佐藤先生が大事にされている本と、その理由を教えてください。

A 私にとっての1冊は、ワインバーグ博士の『ライト、ついてますか—問題発見の人間学』です。大学を卒業して最初に入ったのがシステムコンサルティングをメインにしていた会社なのですが、その分野に何の知見もなかった私に、先輩が「これを読んで感想を『1枚の絵』にまとめてきなさい」と言いました。その時にまとめたこちらのチャートが、これまでのあらゆる仕事のインフラになっています。私にとってのバイブルみたいなものです。

Q 今後書きたいテーマがあれば教えてください。

A コンサルタントの実践ツールとして、ワインバーグ博士の本のエッセンスである先ほどのチャートに関する書籍が書ければと思っています。

著者紹介

佐藤先生((税理士法人 K・T・Two)

氏名 佐藤敏郎
プロフィール 税理士法人K・T・Two代表社員。公認会計士・税理士。

中央大学商学部会計学科、Suffolk University MBA MST課程卒業。大阪大学法学研究科博士課程後期在学中。
コンサルティング会社、独立系会計事務所グループを経て、上場企業社外取締役、非上場企業取締役及び監査役等を歴任、現在は日本公認会計士協会常務理事(租税担当)、東京商工会議所租税委員会学識委員、公認会計士試験委員(租税法)を務めている。

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