飲食店専門税理士が指南 黒字倒産しないための飲食店経営のオキテ ~ 現金 編 ~
この連載では、飲食店専門の税理士法人として、飲食店の経営・財務コンサルティングや仕組みづくりをサポートするCredo税理士法人代表の水野代表税理士が、これまで目の当たりにしてきた飲食店が抱える悩みや経営を軌道に乗せるまでのドラマ・試行錯誤の様子を紹介します。初回は飲食店経営の要「現金」についてです。

飲食店の現金は危険がいっぱい
都内で焼き肉店を3店舗経営しているAさんは、お店の現金の取扱についてどうすればよいか悩んでいました。
開業当初からオーナー兼店長としてお店のお金を管理していたので、あまり気にせずレジのお金で食材などを購入したり、お金は必要な分だけ個人通帳へ移したりしていました。
しかし、2号店、3号店の出店により自身の目が行き届かなくなってくると、明らかにレジのお金が足りないお店が出てきました。店長や従業員へ注意をしたものの、今の状態ではその理由を調査する方法がなく、お店の雰囲気も悪化してしまいました。
現金の出し入れが頻繁で、日々、まとまった売上がある飲食店のオーナーや店長にとって、正確で安全な現金・預金管理はとても重要な問題です。
「飲食店の現金は危険がいっぱい」といわれます。犯罪という意味では空き巣のほか、内部のスタッフによる着服もあり得ます。
また、悪意のない釣り銭ミスは珍しくありませんし、店舗が火事になってしまえば現金は失われてしまいます。飲食店の税務調査時にも現金・預金の管理が一番チェックされます。現金・預金を正確で安全に管理する仕組みを作ることが健全なお店を作る第一歩になるのです。
飲食店の現金をうまく管理するには
その後、Aさんは店舗で発生する現金を「レジ現金」「売上現金」「小口現金」と色分けし、それぞれの管理ルールを決めました。これにより、各現金のあるべき残高と実際残高の一致確認ができるようになり、どこが原因で現金が足りなくなっているのかを把握することができるようになりました。
店舗での現金には次の3つがあります。
①レジ現金 :お釣り用にレジに準備している現金
②売上現金 :その日の現金売上によって手元に残る現金
③小口現金 :店舗で買い物が必要な場合に店舗で使う現金
現金の流れが不明瞭になる理由は、店舗で現金の支払いなどが生じた際にレジ現金や売上現金を使うことによって、各現金の正しい残高が分からなくなってしまうためです。
そこで売上現金もレジ現金も小口現金もすべて1つで管理せずに、不正防止、ミス防止の観点から現金を3つの種類に区分して別々に管理することをお勧めします。そうすることによって、各現金のあるべき残高と実際残高の一致確認ができるようになり、現金の流れがシンプルになります。
飲食店経営の第一歩は現金から!現金とうまく付き合える仕組みづくりが重要です。

著者: 水野剛志
Credo税理士法人代表/税理士・経営コンサルタント
富山県出身で醤油屋の次男として誕生。慶應義塾大学商学部卒業後、税理士法人山田&パートナーズ、アビームコンサルティング(株)、OAG税理士法人/㈱OAGコンサルティングを経てCredo税理士法人/Credoコンサルティング事務所を設立。飲食店を専門に開業支援や多店舗展開支援を年間50件以上実施するなど、財務戦略に基づいた飲食店の繁盛店の仕組みづくりに強みを持つ。
■Credo税理士法人
http://credo-tax.com