個人事業主の事業支出のうち、仕入れや交通費、得意先との飲食費などが経費になることはイメージしやすいだろう。では、建物や土地、車両などの固定資産を購入した場合はどうだろうか。今回は、減価償却費と呼ばれる費用について紹介していきたい。

■減価償却とは?

業務のために固定資産を購入した場合、時間の経過とともに価値が減少していくものについては、その期間に応じて経費化することが認められており、これを「減価償却」という。

このような減価償却資産の取得時には、その取得に要した金額のすべてを経費にすることはできず、その資産の種類ごとに定められた期間に応じて、分割した金額を経費として計上することになる。

ただし、使用可能期間が1年未満であるもの、または取得に要した金額が10万円未満であるものについては、その全額を取得時の経費とすることが可能だ。

減価償却の計算方法は、大きく別けて2つ。「定額法」と「定率法」である。簡単にいえば、毎年同額を経費として計上するか、使用開始時の経費化を大きくして、徐々に経費化する金額を小さくするかのいずれかである。個人事業主の場合には、原則は「定額法」により償却をすることとなるが、届出をすることにより「定率法」を選択することも可能だ。

■中古車は経費化が早い!

これまで減価償却の基礎について触れてきたが、個人事業主にとって最も身近な減価償却資産は車両ではないだろうか。

一般的な普通自動車であれば、法定耐用年数は6年、軽自動車であれば4年と定められている。そして、法定償却方法である定額法により償却するとした場合には、6年の場合の償却率は0.167、4年の場合の償却率は0.250と定められている(平成24年4月1日以後に取得したものと仮定。以下同様)。仮に200万円の車両を購入した場合には、定額法により各年に経費化できる減価償却費は以下のようになる。

6年償却の普通自動車の場合:2,000,000円×0.167=334,000円
4年償却の軽自動車の場合:2,000,000円×0.250=500,000円

もし定率法により償却する旨の届出をしている場合には、償却率は6年の場合には0.333、4年の場合には0.500となるため、初年度に経費化できる減価償却費は以下のようになる。

6年の場合:2,000,000円×0.333=666,000円
4年の場合:2,000,000円×0.500=1,000,000円

車両は建物などの資産に比べて使用可能期間が短いことから、このように早めに経費化することが可能だ。しかし、これらの計算方法は新車を購入した場合であり、中古車を購入した場合には、別の計算方法を用いる。中古資産を購入した場合には、すでに使用可能期間が短くなっていることから、原則はその中古資産の耐用年数を見積る必要があるが、見積もりが難しい場合、簡便法で計算することができる。耐用年数の計算式は、

1.法定耐用年数の全部を経過した資産

その法定耐用年数の20%に相当する年数

2.法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とする。

つまり、普通車であれば4年以上、軽自動車であれば2年以上を経過しているものであれば、耐用年数は2年。さらに、定率法を選択している場合には、償却率が1.000となり、すなわち、初年度に全額を経費化することができるのである。

■事業用への転用

最後に、減価償却資産についてもう1点説明をしておこう。これまで説明してきたように、事業で使用するために車両などの減価償却資産を購入した場合には、使用可能期間に応じて経費化することが可能だ。

そこで、元々車両を保有している場合には、事業用に新たに購入しなければならないのか、という疑問である。しかしそのようなことはなく、非業務用から業務用に転用した場合にも減価償却による経費化をすることができるのである。

非業務用から業務用へ転用した場合には、非業務用として使用した年数に応じて取得時から価値を下落させ、転用後の耐用年数については中古資産を購入した場合と同様の計算式により算出することとなる。

ちなみに、事業用へ転用した場合に注意すべき点は、その車両を100%事業用に使用するのか、ということだ。これまで非業務用として使用してきたものを100%事業用として使用するということは考えにくいため、そのような場合には、非業務用と業務用の利用割合に応じて経費化する必要がある。

今期の黒字。なにか経費に使えないかなぁ? と思うことがあれば、事業用に中古車の購入を検討してみてはいかがだろうか。

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