平成29年4月1日付けで財務省から、税理士・税理士法人の懲戒処分者が発表された。同28年は、前年より2件少ない39件だったが、一方で、重い処分を逃れるためにウラの手を使う税理士もおり、公表されている数字では把握できない非行税理士も少なくない。

士業を監督する官庁は、非行税理士を取り締まり、悪さをした資格者を処分する。税理士の場合は財務省。4月1日、財務省から平成28年の懲戒処分者が発表されたが、過去5年で最も少ない39件で、最も重い処分の「停止」も28件と減少していることが分かった。

<表:税理士・税理士法人に対する懲戒処分等件数>

*国税庁ホームページより

税理士の懲戒処分は、税理士法に規定され、その量定については、不正行為の類型ごとの量定の考え方を基本としつつ、(1)不正行為の性質、態様、効果等、(2)税理士の不正行為の前後の態度、(3)懲戒処分等の前歴、(4)選択する懲戒処分等が他の税理士及び社会に与える影響、(5)その他個別事情を総合的に勘案し、決定するとされている。
非行税理士が減ってきたことは良いのだが、実は、税理士の間では、こうした懲戒処分を回避するウラのテクニックがある。

税理士が法律違反をすると、下手をすると資格剥奪などの重い刑罰が下される。資格剥奪ともなれば、当然、税理士としての仕事が出来なくなるため、税理士ならこの最悪の事態は避けたい。こうした崖っぷちの税理士が最終手段として使う手が、懲戒処分が下される前に、自ら税理士資格を返上してしまうのだ。というのも、税理士法上の処分が下される前の自主返上なら、法律上は税理士でなくなるため、税理士法による処分ができなくなる。つまり、税理士法上ではお咎めナシということになる。もちろん、量刑によって他の法律によって処罰が下されるのだが、税理士法以外なら、税理士資格を剥奪される最悪の事態は避けられる。

資格を返上してしまったので、会計事務所は経営できなくなるわけで、事務所は解散することになるのだが、資格剥奪となっても会計事務所は解散しなくてはならないので、自主返上のほうがまだましだ。資格剥奪でなければ、将来、再度税理士として仕事を復活することが可能。ちなみに、これまでの傾向では、3年程度で再度税理士として復活する方が多いようだ。