「業務全体のリードタイム」をKPIにする
では、何を改善のモノサシにすればいいのでしょうか。
工数削減は1つの指標ですが、それだけでは不十分です。
ある工程の工数が減っても、ボトルネックが変わらなければ業務全体の処理時間は変わりません。
「1人あたりの処理件数が増えた」「入力時間が短縮できた」といった部分的な成果は出ていても、全体の処理日数が変わらなければ意味はありません。
経理をはじめとする事務系の業務で意識すべき本質的な指標は、「業務全体のリードタイム」です。
業務の入口から出口までにかかる時間、つまりある仕事がスタートしてから完了するまでの所要時間のことです。
ただ、これを実際にモノサシとして記録・管理している職場は、ほとんどありません。
唯一の例外が月次決算です。
月初から経営報告の数値が確定した日まで何営業日かかるかがリードタイムにあたり、これは多くの企業が把握しています。
しかし、仮に10営業日かかっている月次決算を5営業日に縮めるためには、全体のリードタイムだけでなく、業務プロセスのどこで滞留が起きているのかを明らかにする必要があります。
請求書の回収に3日、仕訳の入力と確認に2日、部門への問い合わせに2日…。
こうやって分解していくと、ボトルネックの所在がだんだん見えてきます。
処理能力の不足、ミスの多発、必要な情報や書類がそろわない、といった要因でボトルネックは発生します。
まずは、全体のリードタイムを遅くしている要因を特定し、そこを改善することが先決です。
そのためには、どの工程にどれぐらいの時間がかかっているかを知る必要があるのです。
最初から正確な計測を目指す必要はありません。
「何営業日かかっているか」を把握するだけで十分です。
記録が残っていなければ、まずは担当者の記憶や感覚から出発しても構いません。
重要なのは、処理した時間だけでなく、待ち時間を含めた工程全体の所要時間です。
BPOを検討する前に、AIを導入する前に、まずいまのリードタイムを知ることです。
それが改善の起点です。
月次決算のリードタイムをどう設計し、短縮していくかについては、次回に詳しく取り上げます。
今回は、「リードタイムをモノサシにする」という発想そのものを持ち帰っていただければと思います。
施策より先に、ボトルネックを見る
BPO、RPA、AI。
手段が変わるたびに「今度こそ」と期待し、結果が出ずに落胆する。
その繰り返しの根本にあるのは、施策の良し悪しではなく、「どこに手を打つか」の見極めです。
経理担当者は、業務全体を俯瞰できる数少ない立場にあります。
数値が最終的に集まってくる位置にいるからこそ、どの工程で何が詰まっているのかを冷静に観察することができます。
リードタイムをモノサシにするということは、その気づきを改善の起点に変えることです。
まずは自社の月次決算のリードタイムを、工程別に分解してみてください。「○営業日」という単位で構いません。
その数字を出すだけで、改善の議論がBPOやAIを選ぶ話の前に、「どこが詰まっているのか」という話から始まるようになります。
実態を正しく認識することから、改善は始まります。
次回は、月次決算のリードタイムを実際に短縮するための具体的な設計方法をお伝えします。
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