仕事は「仕訳の前」と「仕訳の後」にシフトする

では、会計人の仕事はどこに向かうのでしょうか。私は「仕訳の前」と「仕訳の後」であると考えています。

「仕訳の前」とは、業務プロセス全体を整理し、適切な書類や情報が経理に正しく流れてくるように再構築することです。
この連載を通じてお伝えしてきた「業務設計」がここにあたります。
仕訳を人間が手で入力しなくてよい仕組みを作るためにも、情報の保存の仕方やルールの整備を含めて、ここの重要度は高まっています。

連載の第10回では、業務改善のモノサシを「業務全体のリードタイム」に置くべきだという考え方を、第11回では、月次決算の前工程を設計する具体的な方法を取り上げました。
いずれも「仕訳の前」の話であり、経理に届く情報の流れそのものを設計し直すアプローチです。
多くの企業では、業務プロセスを設計できる人材が不足しています。
ITツールやAIの導入は進んでも、業務の流れそのものを見直せる人がいなければ、効果は限定的です。

業務設計スキルを身につけることは、決して簡単な話ではありませんが、会計人にとって1つのアドバンテージは、業務プロセスの最終工程で会社のあらゆる取引を記録してきた経験と知識です。
どの部門からどのような情報が届き、どこで滞りが生じているか。経理として培ってきたこの感覚が、業務設計の土台になります。

もうひとつの「仕訳の後」は、データが会計ソフトに登録された後の仕事です。
予実管理や資金繰りの分析、部門別PLの作成など、正確な会計データを前提に経営判断を支える仕事がここに含まれます。
本来、会計人の仕事の中心はここになるはずでした。
しかし、現実には仕訳の入力や確認に多くの時間を取られて、分析や報告がおろそかになっている場合も多かったのではないでしょうか。
仕訳の入力作業負荷が軽くなれば、こうした本来の仕事にも時間を充てられるようになります。

会計人の次のスキルとして

「AIに仕事を奪われる」と悲観する必要はありません。
むしろ、仕訳の入力という「作業」をAIが引き受けてくれるようになったとき、自分は何に時間を使うのか。
そう考えることが、これからの会計人にとっての出発点です。

仕訳の入力をAIに任せたとしても、会計人としての強みや価値が失われるわけではありません。

業務設計に必要なのは、実際の業務に対する解像度です。
請求書や領収書に記載された内容の裏側にある、取引や事業の中身に興味を持つことから始まります。
「なぜこの請求が発生しているのか」「この取引はどういう業務の流れの中にあるのか」と考えることが、業務設計への第一歩です。

この連載を通じてお伝えしたかったのは、業務設計という考え方が会計人にこそ必要だということです。
会計や税務の知識ももちろん重要ですが、目の前の仕訳を処理する側から、業務の流れそのものを設計する側へのシフトがこれからは求められていくのです。
ぜひ、業務設計という切り口で日々の業務を見つめ直すことに取り組んでみてください。

1年間お読みいただき、ありがとうございました。

武内氏のこれまでの連載はこちら:会計人のための仕組み化仕事術①~⑪

 

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