今回は、従業員数が5名以下のフリーランス(個人事業主)を対象に、領収証等の電子保存方法やメリット、導入方法について紹介する。
■帳簿書類の保存と電子保存制度の改正について
法人及び青色申告者は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならない。
よって、従来は領収等についても、原則として、その原本を保存する必要があった。しかし、2005年の電子帳簿保存法の改正、2016年、2017年の規制緩和により、スマートフォンによる撮影での電子保存化が認められた。
これらの改正により、業務効率の改善及びコスト削減効果が期待されている。本稿では、主に、従業員数が5名以下のフリーランス(個人事業主)を対象に、領収証等の電子保存方法やメリット、導入方法について触れていきたい。
■電子保存のメリット
フリーランスの方は、領収証をどのように管理しているだろうか。たとえば、取引先との打ち合わせのため、カフェにて軽い軽食等を済ませ、その領収証を受け取ったとしよう。従来であれば、とりあえず領収書を持ち帰り、月ごとにファイリング。そして、確定申告時にまとめて経費の集計を行う、といった感じではないだろうか。
これらが、電子保存の適用を受けた場合、次のようになる。
領収書を受け取ったら、まず自分の氏名を記載(氏名スタンプ等は認められていない)。後は、それをスマホで撮影して、業者へ送信する。領収証はその場で捨ててしまって構わない。そして、確定申告時には、データを集計済しているため、データを会計ソフトに取り込んだ上で、申告書を作成すればよい。
年末年始の「確定申告書のための集計をしないといけないな~」という、モヤっとした気持ちとは、もうおさらばできるだろう。さらに随時、領収証をデータ化するため現時点での経費の状況を、把握することができるという大きなメリットもあげられる。
■電子保存を適用する要件・準備
まず、電子保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出し、承認を受けなければならない。なお、この申請書は、電子保存を行おうとする日の3カ月前の日までに提出する必要がある。
次に、領収証を送付する3日以内に、タイプスタンプの付与を受けなければならない。そのため、タイムスタンプ認定業者との契約が必要である。タイムスタンプとは、電子データに属性として付与される時刻情報であり、領収証等の複製や改ざんを防止するために必須とされている。
最後に、電子保存に不正等がないことを、顧問税理士による定期検査を受ける必要がある。
以上が主な要件となるが、タイムスタンプ業者及び顧問税理士との契約となれば、数十万円はかかってしまうため、まだまだ売上が少ない小規模のフリーランスにとって、コスト的に厳しいかもしれない。そのため、費用対効果を鑑みて導入の検討をしてほしい。
一方、すぐには導入できなくとも、今後の更なる改正やタイムスタンプ業者のコストダウンに向けて、領収証の電子化の準備をしていくという選択も。最近では、スマホにて領収証の画像を送信すれば、低コストで集計してくれる業者も多くある。このような業者を利用してプチ電子保存化(領収証は捨てないが、都度電子データ化しておく)を進めてみてははいかがだろうか。