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2016年度 4大監査法人の業界地図 人材から分析

監査業務には多くの人手が必要不可欠であり、ある面、総人員数がそのまま会社の力として反映されると言える。その反面、費用のほとんどを人件費で占めるため、高い収益性を生み出すには人件費を抑えることも常に経営課題とあげられる。2016年度のBIG4成績表を、人材の面から振り返ってみる。

1. 2016年度 人員数比較

※1 特定社員等含む ※2 公認会計士および公認会計士試験合格者等の合計 ※3 海外駐在員および海外派遣の監査スタッフは含まず ※4 「業務及び財産状況説明書」内で正確な合計人数を明らかにしていない。同社ホームページ内「概要・沿革」ページより引用

○人員数はトーマツが2期連続でトップに

当期、人員数が最も多い監査法人は前期に続きトーマツでした。

新日本は前期比12人減、対してトーマツは154人増、あずさは約200人増(前期人員数が不明なため概数)、PwCあらたは227人増と、新日本以外の監査法人は200人前後の人員増となりました。近年監査法人の人手不足が叫ばれる中で、1法人だけ人員減という、一人負けが鮮明となった当期でした。

 

○社員比率はあずさがダントツに

一般の会社でいうところの役員である「社員」は、数・比率ともにあずさがダントツの1位となりました。比率は4位であるPwCあらたの2倍以上であり、社員昇格が働く人のモチベーションを保つことを考えれば、あずさは社員になる可能性が高いためモチベーション維持に良いともいえますし、逆に上がつかえているともとらえることができます。

一方、ダントツで社員比率が低いのがPwCあらたです。割合は他法人の半分程度しかありません。

 

○会計士等の数は新日本を抜いてトーマツがトップに

公認会計士および公認会計士試験合格者等の合計数は、トーマツがトップ、僅差であずさが2となりました。前期まで長年新日本がトップだったため、とうとうトップを譲り渡したかたちになります。一方、会計士等の総人員数における比率でいえば、あずさがトップ、2位が新日本、3位がトーマツとなります。新日本やあずさは監査証明業務への依存度が高いことが、このような結果を生みました。

売上に占める非監査証明業務の割合が多いPwCあらたでは、監査法人でありながら、総人員数に占める会計士等の割合は半分となっています。

2. 社員一人当たりの業務収入および利益率

(単位:千円)

※一人当たり数値の算出に当たっては2016年度の業務収入を分子に、2015年度末と2016年度末の社員数の平均を分母として算出している ※トーマツは決算月を変更したため、当期は2016年10月1日から2017年5月31日の8カ月

○社員比率が低いPwCあらたが業務収入および営業利益ナンバーワン

PwCあらたが社員一人当たりの業務収入・営業利益はダントツのトップとなりました。これは、社員比率が低いことが影響しているものと思われます。一方、あずさは社員数トップですが、それに値するだけの売上をあげているため、社員一人当たりの営業利益はPwCあらたに次いで2位となりました。さらに、当期純利益はダントツの1位となっています。

新日本は業務収入は2位につけましたが、営業利益・当期純利益は3位に甘んじています(なお、トーマツは当期8カ月しかなかったため除外)。

 

3. 人員一人当たりの業務収入および利益率

(単位:千円)

※一人当たり数値の算出に当たっては2016年度の業務収入を分子に、2015年度末と2016年度末の人員数の平均を分母として算出している ※トーマツは決算月を変更したため、当期は2016年10月1日から2017年5月31日の8カ月

○監査に強い新日本と非監査に強いPwCあらたがハッキリと分かる結果に

人員一人当たり業務収入は、トップはあずさ、2位が新日本、3位がPwCあらたという結果になりました(トーマツは当期8カ月しかなかったため除外)。

監査証明業務の人員一人当たりの収入は、同比率が高い新日本が1位、非監査証明業務については同比率が高いPwCあらたがダントツの1位となりました。

「監査証明業務に強い新日本」と「非監査証明業務に強いPwCあらた」というイメージをはっきり補強する結果となりました。

 

4. 人件費による比較

(単位:百万円)

※5 人件費として開示されていないため、「報酬給与、賞与、退職給付費用、社員退職引当繰入、法定福利費、福利厚生費」の合計を人件費としている。 ※トーマツは決算月を変更したため、当期は2016年10月1日から2017年5月31日の8カ月

○人件費は変わらず新日本がトップに

報酬の高さは優秀な人材を集め、繋ぎとめるための鍵となります。

人員一人当たりの人件費は、新日本がトップ。以下、あずさ、PwCあらたとなりました。

報酬給与の項目を一人当たりでみると、PwCあらた、新日本、あずさという順序になります。一人当たり賞与はあずさ、新日本の順となりました(トーマツは除外、PwCあらたは賞与の明細非公開)。

PwCあらたは報酬給与が高く、あずさは賞与が高く、新日本はそのどちらも比較的高いことが見とれます。

 

○人件費の削減が始まった新日本

人件費トップは新日本です。僅差であずさが2位に続きます(トーマツは除外)。人件費の明細をみると、報酬給与も新日本がトップ、あずさ、PwCあらたの順位となります。これは業務収入の順位と同じです。

業務収入に占める人件費の割合は大差ありませんが、新日本が1位、PwCあらたが2位、あずさが3位となります。

費用のほとんどを人件費が占める監査法人では、高収益体制を確立するには人件費の削減が欠かせません。リーマンショック後にはBIG4各法人とも、早期退職などにより大きなリストラを図り、現在は一度減らした人件費を増やしている過程にあります。

そのような中、大きくクライアント数を減らした新日本は、また新たに人件費の削減を始めており、報道によれば水面下でリストラを進行中だといいます(2017年7月6日付日経新聞朝刊)。当期はまだその結果は出ていませんが、2017年度以降は人件費のランキングについても劇的な変化がありそうです。

 

※参考資料
◆新日本有限責任監査法人:第18期 業務及び財産の状況に関する説明書類(平成28年7月1日~平成29年6月30日)
https://www.shinnihon.or.jp/about-us/our-profile/stakeholder/explanatory-documents/pdf/2017-09-07-shinnihon.pdf

◆有限責任監査法人トーマツ:第50期 業務及び財産の状況に関する説明書類(平成28年10月1日~平成29年5月31日)
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/audit/stakeholder.html

◆有限責任あずさ監査法人:第33期 業務及び財産の状況に関する説明書(平成26年7月1日~平成27年6月30日)
https://home.kpmg.com/jp/ja/home/about/azsa/stakeholders/public-inspection-33.html

◆PwCあらた有限責任監査法人:第12期会計年度 業務及び財産の状況に関する説明書(平成26年7月1日~平成27年6月30日)
https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/assurance/assets/pdf/public-inspection.pdf

◆日本公認会計士協会:2017年度版 上場企業監査人・監査報酬実態調査報告書
http://www.hp.jicpa.or.jp/ippan/about/news/20170518eew.html

 

著者: KaikeiZine編集部

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