監査市場を席巻する4大監査法人。毎年、公認会計士試験に合格した若手のほとんどを採用しているが、人材面から見た規模は、一体、どういった勢力になっているのだろうか。今回はこの4大監査法人を人材面から分析する。
4大監査法人比較の第2回目。今回は人員から各社の特徴を見ていきたいと思います。
その前に、一般企業では社員というと従業員を指しますが、監査法人の場合は、一般企業でいうところの役員が社員です。従業員は公認会計士及びその他資格者、無資格者などを指します。業界人でなければ勘違いする方が多いので、以下、「社員」イコール「役員」として読んでください。
1.2015年度 人員数比較
※1 特定社員含む
※2 公認会計士及び公認会計士試験合格者等の合計
※3 あずさは正確な合計人数を明らかにしていないものの、「第31期 業務及び財産の状況に関する説明書(平成26年7月1日~平成27年6月30日)」に2015年度末の人員数は約5,400名との記載があるため当該数値を使用
○総人員数のトップは新日本
最も人員が多いのは新日本。ほとんど差がなくトーマツが続き、3位のあずさはさらに1割以上少なくなっています。4位に位置するあらたは新日本の1/3程度で、業務収入と同様、上位3法人とは大きく差があります。
○人員数がトップの新日本、監査業務が低利益率であることに関係が?
総人員数で首位の新日本が、社員数及び公認会計士等の数でも1位です。ただ、総人員数に占める社員及び公認会計士数の比率でみると、あずさが1位になっています。あずさの比率が高いのは、4大監査法人で唯一、業務収入に占める監査比率が8割を超えていることと関連しているのかもしれません。なお、社員比率の高い法人を、社員に昇格しやすいとみるか、上が詰まっているとみるか。恐らく後者でしょう。
いずれにせよ、あくまで監査を収入の柱とする新日本、トーマツ及びあずさでは、1割程度が社員、そして7割以上が公認会計士等となっているのに対し、監査・非監査比率がほぼ半々のあらたでは、社員比率が約5%、公認会計士等比率も5割強にとどまっております。
以上より、監査・非監査比率と社員・会計士等の比率には相関関係があり、そしてまた、監査業務が低利益率である要因の一つなのかもしれません。
2.構成員一人当たりの業務収入及び利益率
ここからは、社員及び構成員一人当たりの業務収入と利益を見ていきます。
※4 一人当たり数値の算出に当たっては2015年度の業務収入等を分子に、2014年度末と2015年度末の社員数または構成員数の平均を分母として算出している。ただしあらたは2014年度の社員数が不明であるため、便宜的に2015年度末の社員数を分母としている。
※5 開示されていない
○社員数が少なく、非監査比率が高いあらたがいずれもトップ
業務収入では、あらたが大きくリードし、他法人の2倍程度となっています。それに続くのが新日本で、3位のトーマツと4位のあずさはほぼ同額。あらたがダントツとなっているのは、社員比率が他法人の約半分と少ないためと考えられます。
監査と非監査に分けてみても、あらたの優位は変わりませんが、監査収入では2位新日本の1.2倍程度なのに対し、非監査収入では2位トーマツの4倍強、4位あずさに至ってはほぼ6倍と、圧倒的な差がついています。
また、営業利益でみても、あらたの圧倒的優位は揺るがず、その要因として一つは社員比率の低さが、そしてもう一つは高利益率の非監査比率の高さが考えられます。
上記の通り、社員数でみるとどうしてもあらたの数字がよく見えてしまいます。そこで法人全体として比較をすべく、以下では全構成員をもとに分析を行ってみます。
※6 あずさの2014年度末合計人数が不明のため、簡便的に2015年度末の合計人数を分母として算出した。
○業務収入のトップは新日本だが監査収入ではあずさ
業務収入では新日本がトップにたち、続いてあずさ、あらた、そして最後がトーマツ。トーマツのみ、唯一1500万円を切っており、1位の新日本とは120万円以上の差があります。
監査・非監査別でみると、監査収入1位は、優良な監査クライアントを数多く抱え、かつ、構成員数も比較的少ないあずさ。4位はあずさの4割程度しかないあらたですが、上位3法人だとトーマツが最後に位置しています。これはIPOを得意とし、クライアントの規模が比較的小さいためと考えられます。
一方、非監査については、ここでもあらたが引き離していますが、上位3法人では、コンサル、FASなどグループ間での結びつきが強いトーマツがトップ。一方、監査に注力していると思われるあずさが4位に位置しています。